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扇風機の宇宙人を絶滅の危機から救おう!

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日替わりのテーマで様々なレポートを行なうコーナー『暮らしに鉄分』。
火曜日は『早川敦子のそぼQ』です。「なぜ?」「なんで?」という生活の中の素朴な疑問を、火曜レギュラーの早川敦子が解決します。

今回のテーマはこちら。
「扇風機に向かって『あー』とやると、変な声になるのはなぜ?」

あるあるネタの日本代表


まるで宇宙人になったような気分を味わえる、“扇風機にあー”は、あるあるネタの日本代表と言えるでしょう。ある調査によると、日本人の9割が「やった事がある」と答えているそうですよ。
誰に教わるわけでもなく、子どもは自然にやってしまいますよね。もはや通過儀礼です。「ハイハイ・よちよち・扇風機にあー」。人はこれを大人の階段と呼ぶとか呼ばないとか。

いや、何歳になってもやりたくなるのがこの行為。言わば国民的行事です。早川は、家電製品売り場で展示されている扇風機に、片っ端から「あー」と言っては、その音色を楽しんでいるそうです。本人いわく「利き扇風機」。なんと風流な遊びでしょう…とは、まあ普通は思われません。それを聞いた多田しげおも火曜アシスタント・原田裕見子もドン引きです。
さすが利き扇風機師。瞬時にその場を涼しくさせるのでした。

犯人はこの中にいる!


さて、変な声になる理由とは?
まずは、街行く人々に意見を聞いてみました。
「空気が動くから」「風のせいで震えてる」「発した音が扇風機で回される」などなど。
まとめると、「出した声が扇風機の風によって乱されるから」という意見に集約されるようです。

そこで、専門家の出番です。科学コミュニケーターの本田隆行さんにお話を伺いました。

「風の影響は、人間の耳に入ってくる程度の音ならほとんどありません。エアコンの前で『あー』と言っても変わらないですよね。ただ空気がフワーッと流れてるだけだと、特に変化はないはず」

なんと、風のせいではなかったのです。
利き扇風機師、かっこよく言えばエレクトリック・ファン・ソムリエである早川は、すでにその事に気付いていた様子。最近「羽根のない扇風機」が現れましたよね。あれも、どんな声になるか、家電売り場で“テイスティング”したそうなんです。すると、宇宙人の声にはならなかったといいます。

考えてみれば、風で声が劇的に変わってしまうのなら、T.M.Revolutionはまともに歌えないですものね。

つまり、風は濡れ衣を着せられていたのでした。では、「扇風機変声事件」の真犯人は一体…?
実は、犯人はこの扇風機の中にいるのです。

謎はすべて解けた!


「普通に『あー』と声を出すのと、口の真正面に下敷きなどを出して『あー』と言うのとを比べてみてください。目の前の障害物に跳ね返って聞こえてくる声は、ちょっと違うんですよね」
トリックを語り始める本田隆行探偵。

「では、扇風機はどうか。グルグル羽根が回っていますね。ということは、声が羽根にぶつかって跳ね返ってくるのと、声が羽根の隙間を通り抜けていくのとが、交互に繰り返されているのです。しかも高速で。だから、声が揺れて聞こえる」

そう、犯人は羽根だったんです。道理で、羽根のない扇風機では変声にならなかった訳です。

改めて説明しましょう。物理的に言えば、空気の振動・波が伝わって聞こえてくるのが、音のしくみ。波は物にぶつかると跳ね返ってくる性質があります。
なので、扇風機の羽根に当たった時は、その跳ね返ってきた音と、自分から発した声が混ざり合い、倍増して聞こえるのですね。
一方、羽根に当たらずそのままスルーされてしまう声もあります。大きく聞こえる音と、小さくなってしまう音。その繰り返しがハーモニーを生み出しているのでした。

そのハーモニーは、扇風機の強弱によっても変わってきます。もちろん、風の強さではなく、羽根の回転の早さによって。弱風なら「あ”-あーあ”ーあー」、強風なら「あ”ああ”ああ”ああ”あ」という感じですね。
「お好みでお選び下さい」とは早川ソムリエの弁。

絶滅危惧種の3枚羽根


世代を超えて楽しめるこの、扇風機のVR宇宙人機能。発見した時は誰もが感動を覚えましたよね。
しかし、時代の流れは残酷なもの。今の子どもたちには、我々が味わった劇的な声の変化が、体験しづらくなっていきそうだというのです。本田さんが話します。

「昔の扇風機と今の扇風機は、風を出す原理は一緒です。ただ、羽根の形はどうでしょう?最近は羽根が細かく、多くなってますよね」

これまでは3枚や4枚羽根が普通でした。が、今では5枚や7枚が主流になりつつあります。凄いのは10枚なんてものも。

枚数が少ないと強い風が送れますが、作動音はややうるさめ。
枚数が増えると、風の切れ目が少なくなり、優しく柔らかい風が送れるようになります。自然界のそよ風のようで、体に負担がかからず快適。音も静か。
エアコンとの併用でも微風の方が使いやすい。現代の家庭に受け入れられやすく進化しているのでした。

しかし、羽根の枚数が多いと隙間が小さくなります。すると音の変化が減ってしまいます。つまり、宇宙人声の要素が薄れてしまう。感動の度合いが弱くなってしまうのです。

扇風機は音を楽しむ楽器


扇風機としてはどんどん便利になっていっている訳で、喜ぶべき事ではあるのですが…。でも、寂しいですよね。

「今はメールですぐやり取りできるけど、手紙を待つあのワクワク感もいいんだよなあ」
「すっかりアカ抜けして綺麗になったけど、以前の田舎っぽさが残ってた頃の方が親しみがあったなあ」
「流ちょうなしゃべりになって立派になったけど、噛まなくなってイジれなくなったなあ」
…みたいな気持ちと言いますか。

やわらかい風の扇風機だと、風力で大事な所をお盆で抑えつけるアキラ100%のネタもできませんし。

「『宇宙人』というブランドを立ち上げて、羽根の枚数が少ない扇風機を作り続けて、この伝統を守ってほしい」と願う多田。

一方、「宇宙人の音色を奏でる扇風機は、ヴァイオリンと同じ。ストラディバリウスのように、昔の機種の方が名器なんです」と、家電製品をすっかり楽器に変えてしまう、扇風機ニスト・早川なのでした。
(岡戸孝宏)
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2017年05月09日08時33分~抜粋

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