ゴールデンウィークの顔とでも言うべき、5月5日こどもの日。
毎年この日には、大分県玖珠町(くすまち)で『日本童話祭』が行なわれています。
玖珠町の別名は「童話の里」。その理由は、“日本のアンデルセン”と呼ばれている、久留島武彦(くるしま・たけひこ)の出身地だからです。
久留島武彦(1874~1960)は口演童話家。「口演童話」とは、いわゆる読み聞かせに近いもので、絵には頼らず、その長けた話術で聴衆を惹きつけ、童話を語って聞かせることをいいます。
明治・大正・昭和の3代に渡って、子どもたちに童話を通して夢と希望を与え、人として生きるために必要な教えを伝えていったのでした。
こいのぼりの中に入りたい夢、叶えます
日本のアンデルセンと言われる理由
1924年(大正13年)。久留島がデンマークを訪れた際、『人魚姫』などで知られるアンデルセンが、地元では粗末に扱われていることを知ります。そこで彼の偉大さを訴えたところ、アンデルセンが見直され、お墓が改修され記念館も建つことになります。
デンマークのメディアは久留島を“日本のアンデルセン”と称賛したのでした。
その久留島の児童文化活動50周年を記念して、日本童話祭が初めて開催されたのが1950年(昭和25年)。それから今年で68回目を迎える、伝統ある行事なのです。
昨年は熊本地震の影響で中止となったため、2年ぶりの開催となります。
そこでお祭り当日のこの日、日本童話祭実行委員会事務局の、柴田さんに電話でお話を伺いました。
バーチャルリアリティ鯉のエサ
さて、この童話祭、一体どういうことをやるのでしょうか?
「童話にちなんだイベントを中心に行なっています」と語る柴田さん。
桃太郎などに扮した仮装パレード、大型紙芝居、プロの劇団による人形劇、絵本・原画展など童話関連のイベントのほか、魚つかみ大会やミニSLなど子どもが楽しめるイベントが盛りだくさん。
その中でも最大のウリが『ジャンボこいのぼり』。なんと全長60m。しかもこれ、中をくぐり抜けられるというのです。
河川敷に敷かれた黒いマゴイの中に、送風機で風を送り込み、膨らんだ状態の中を歩いていく『ジャンボこいのぼりのくぐり抜け』。なんて夢のあるイベントなんでしょう。
子どもが喜ぶのはもちろんですが、大人でも小さい頃「こいのぼりの中に入ってみたいなあ」と思ったことが、一度はあるはず。現役の子ども・引退した子ども、両方ともスーパーハイテンションになれるのです。
胴回りが24mもあり、高さは大体3~4mほど。ジャンプしても天井(背中)に手が届かないサイズ。走り回ったり、転がったり、何度も通り抜けたりする子どもも多いとか。
想像力が豊か過ぎる人は、自分が鯉のエサになったような気分になって楽しんでいるかも。市販の専用エサでもいいし、食パンや麩、ミミズにもなれますね。今風に言えば、VR鯉のエサ。夢が広がります。
ジャンボこいのぼりと言えば、埼玉県加須市(かぞし)の全長100mのものが世界最大級ですが、くぐり抜けできるものなら、玖珠町がトップクラスでしょう。
子どもに戻ってもいい日
他に玖珠町で注目したい施設は、今年4月28日にオープンした『久留島武彦記念館』。こちらでは、日本全国や世界各地を童話口演して歩いた足跡などが学べます。
特筆すべきは、久留島の肉声のテープがあることです。どうやって子どもたちに童話を聞かせていたのか、実際に体験できるのです。童話は子どもばかりでなく大人の心にも響く作品が多いので、こちらも親子で楽しめそうですね。
今年の童話祭は5万人を超える人々が詰めかけ、1950年の第1回目からの累計来場者が250万人を突破したそうです。
来年の5月5日はぜひ皆さんも玖珠町に出かけて、童心に帰ってみてはいかがでしょうか。
こどもの日は、“こどもに戻ってもいい日”にしてしまいましょう。
(岡戸孝宏)
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