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噛み合わせを良くすれば、全てがうまく噛み合います

毎週金曜日の8時台は、ゲストを招いての特集企画。
今回のテーマは「あご」です。
あごと言っても、九州など西日本でいうトビウオの別名の事ではありません。
志村けんが「アイ~ン」をやる時に強調して突き出す、口の周りにある器官の「顎」です。
もっとも「顎が外れるほどおいしいから、あごと呼ばれるようになった」という説があるので、トビウオが全然関係ない訳でもないのですけど。

名古屋大学医学部附属病院の歯科口腔外科科長であり、名古屋大学大学院医学系研究科の教授でもある、日比英晴先生にお話を伺いました。

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噛み砕いて説明します。顎だけに。


そもそも、顎の役目とは何でしょうか?

(1)食べ物や空気の通り道。つまり、食べる・話す・呼吸するのに必要。
(2)人間にとっては、見た目を印象付ける。
(3)人間以外の動物では、食べ物を捕獲する・掘り出す、攻撃・武器に使う。

(1)については、顎は口とほぼ同じ役割だということです。いわゆる“アゴアシ代”のアゴが、食事代を意味するのもそれが理由ですね。

(2)については、アントニオ猪木のような長い顎。桐谷美鈴のような小さな顎。クッキングパパのようなデカい顎。カイジのような鋭い顎。銭形警部のような割れた顎。安西先生のようなタプタプ顎。
…などなど、様々な種類の顎があり、顔の形を大きく決めていきます。

(3)については、獲物を噛みついて捕らえたり、敵を撃退したりする肉食動物が顕著な例ですね。

総じて、顎は非常に大事な器官だということです。

小さい顎は進化ではなく退化?


ある有名な研究で、イヌ・サル・ヒトなどの進化の過程で、顎の大きさと脳の大きさを比べるものがあり、「顎が大きくなると脳の容積が小さくなり、顎が小さくなると脳が大きくなる」ということが言われています。

一方、進化とは言えない結果が出た研究もあります。日本のある高校の50年前と現代の卒業アルバムを使って、それぞれの時代の男子高校生の平均的な顔をCGで作成。比較してみたところ、明らかに顎が小さくなっているというのです。たった50年間でこれだけの変化は驚異的だそうです。

「顎が小さくなったのなら脳が大きくなっていいじゃない」と思われるかもしれませんが、写真だけでは脳の大きさの変化は分かりません。それに、顎と脳との関係は長年の進化の中での話。50年という短期間では比べられません。

「じゃあ脳は置いといて、顎が細くなってシュッとした顔になってるんだから、カッコ良くていいじゃない」
なんて思われる方もいるでしょうが、実はこれ、顎にとってはあまりよろしくない事なんです。

歯が減っては戦ができぬ


顎が小さくなれば、歯が生えるスペースが狭くなります。狭い所をムリヤリ生えようとするので、向きが不規則になり、歯並びが悪くなり、噛み合わせも悪くなります。
噛み合わせが悪いと、体全体のバランスが悪くなるため、頭痛や肩こりなど様々な体調不良を引き起こします。
逆に噛み合わせが良ければ、おいしく食事ができるし、胃腸の負担も軽くなります。体にいいことずくめです。

更に顎が小さくなっていくと、なんと歯そのものが生えてこなくなるのです。
最近は、元から歯の本数が少ない人が増えているというのです。これも当然、噛み合わせは悪くなります。

かつて、永久歯の正常な本数は全部で32本だとされてきましたが、最近では、親知らずを除いた28本が標準となっています。親知らずは、他の歯に悪影響を与える場合が多く大抵抜いてしまったり、生えないこともあるため、数に入れなくなってきたようです。

デビューできずに消えてゆく


歯は、「切歯」「犬歯」「小臼歯」「大臼歯」とグループ分けされています。

犬歯は上下左右に1本ずつ、計4本のみですが、その他の歯は上下左右に2本ずつ、計8本。総計28本です。
歯が生えなくなるには法則があるそうです。それぞれの歯のグループの中で、小さい方の歯が生えなくなるといいます。しかも、グループの奥の方が小さいそうです。

例えば、右上にある切歯2本のうち、真ん前の歯は生えてくるけど、そのすぐ右横(犬歯の隣り)には歯が生えてこないということです。

ただ、小臼歯の場合は、2本ともほぼ同じ大きさのため、生えないのは手前か奥か決まってないそうです。

別の例えをしましょう。
“切歯ガールズ”という2人組アイドルユニットを作ることになりました。しかしデビュー前に「小柄な方の子はなんか地味だからやっぱ要らない」となり、大柄な子だけソロデビューするようなものです。

“小臼シスターズ”というユニットだと、「うーん、なんかどっちも同じタイプだなあ。でも君、1ミリ小っちゃいから外れてくれる?」となり、結局片方の小臼歯だけソロデビュー。

…かえってよく分からない例えになってしまいましたが、要するに、顎が小さくなれば歯の本数が減り、噛み合わせが酷くなるということです。

矯正執行しよう


噛み合わせを良くするにはどうするか?それは矯正するしかありません。

歯並びだけなら、普通の矯正治療で治せます。ワイヤーやマウスピースなどを使うやり方ですね。ただ、骨格がアンバランスな場合は手術が必要となるそうです。
アンバランスとは、下顎が前に出ている「受け口」だったり、逆に奥に引っ込んでて上顎が前に出てしまう「出っ歯」などの状態。

その手術方法は、顎の後ろの方の骨を少し切り、いったん顎を分割。正しい位置にずらし、サイズ調整して再び固定するというもの。イメージとしては、工作というかリフォームというか超ハイレベルな裾上げというか。
大変な手間ですが、顎の前後だけでなく上下左右の位置も調整でき、立体的に噛み合わせを良くするには最適の方法だそうです。

昔よりリスクも減り、ポピュラーな手術だそうで、しかも日本は健康保険が適用され、矯正治療を含めて200~300万円。かなり高額ですが、アメリカだと手術だけでも1千万円かかるらしいので、これでもだいぶお得なんです。

「顎が小さいと小顔になる」という美容的なメリットだけを追い求めず、噛み合わせを矯正して良くすることの大事さを、しっかり噛みしめてほしいと願う日比先生なのでした。
(岡戸孝宏)
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2017年04月21日08時14分~抜粋

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