琵琶湖に非常に多くの、ある虫が発生しており、マンションの住民から自治体への苦情が多く寄せられているとのこと。
その虫、一般的には「琵琶湖虫」と呼ばれています。この琵琶湖虫、いったいどんな虫なのでしょうか。
滋賀県琵琶湖環境科学研究センター主任研究員の井上栄壮さんにお話を伺いました。
謎の「琵琶湖虫」その正体とは?
琵琶湖虫、実は身近な虫
琵琶湖虫と言われているのは主に「ユスリカ」という昆虫で、「ハエ目ユスリカ科」に属する虫の総称なんです。
ユスリカにはたくさんの種類がありますが、琵琶湖虫と呼ばれて特に苦情の原因となっているのは、「オオユスリカ」と「アカムシユスリカ」の2種類。
体長約1センチと、ユスリカの中では大型のものです。日本に広くいる種類で、琵琶湖だけにいるものではありません。
琵琶湖虫という名前からてっきり琵琶湖にだけ生息する虫かと思いきや、なんと日本中で見られる虫とのこと。これには驚きですね。
ユスリカの生態は?
オオユスリカとアカムシユスリカの幼虫は、池や湖の比較的浅い場所の泥の中に住んでいます。
植物プランクトンなどが底の方にたまってできた有機物をエサとしていて、水中を泳ぎ回って食べているわけではありません。
オオユスリカは4月と10月の年二回、アカムシユスリカは11月頃の年一回成虫が発生します。
名前は似ていますが、ユスリカは人を刺す「蚊」とは違います。
成虫は餌を食べず、交尾や産卵をして数日で死んでしまうと聞いて「なんだかあわれを感じるような昆虫」とユスリカに同情した様子の多田しげおです。
何のために蚊柱を作るの?
ユスリカのみならず、羽のついた小さな虫によくみられる「蚊柱」。
「頭についてきちゃって大変」とボヤく小倉理恵ですが、実はこの蚊柱、繁殖のための行動なのだとか。
蚊柱を作って飛んでいるユスリカはすべてオスです。
その中にメスが一匹ずつバラバラに近づいてきて交尾をし、その後メスは水面で産卵します。
成虫になったら、次の世代だけ作って死んでいくユスリカ。交尾のためだけに蚊柱を作ってメスを誘うのです。
「あんなにいっぱいいるのに、どうやって選ぶんでしょうね」と興味津々な小倉理恵です。
なぜ「琵琶湖虫」と呼ばれているの?
昔は琵琶湖の水質が悪く、今回と比べ物にならないくらい大量に発生していたユスリカ。琵琶湖の管理・保全で一時的に減少したものの、最近また増えてきました。
昔の状況を知らない、最近琵琶湖の近くに住みだした人々が大量のユスリカを琵琶湖特有の虫と思い込んだことから「琵琶湖虫」という呼び方が定着したようです。
人を刺すこともなくおとなしい蚊で、決して害虫ではありません。
琵琶湖の生態系を支えるユスリカ
ユスリカはうっとおしいだけ、気持ち悪いだけの「不快害虫」と言われています。
しかし幼虫が湖の底にたまった有機物を食べてくれるので、水質の改善に役に立っています。
幼虫は魚のエサになり、成虫は小鳥のエサにと、ユスリカは琵琶湖の生態系を支える大切な存在なんです。
「なんとけなげな」と思わずこぼす小倉。
琵琶湖虫は迷惑どころか、実は役に立つ虫とも言えるということです。不快ではありますが、ちょっと覚えておきましょう。
(minto)
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