健康ライブラリー

健康ライブラリー 2022年3月6日

[この番組の画像一覧を見る]

●教えてドクター 
★3月のテーマ:特別対談「多職種連携と情報共有の課題」

植村和正 先生(愛知淑徳大学 健康医療科学部)
網岡克雄 先生(金城学院大学 薬学部)
聞き手:後藤克幸(CBC論説室)


後藤:植村先生は将来多職種の医療チームに関わる学生さんの教育を行うと同時に、クリニックで様々な職種の方々と連携し地域医療を行っていらっしゃいます。チーム医療はますます重要になってきていると感じていらっしゃいますか?

植村:はい、その通りです。多職種連携というテーマはどの学部の教育課程でも重要視されるようになってきています。私自身は淑徳大学健康医療学部の健康栄養学科にて管理栄養士の養成課程を担当していますが、同学部には視能訓練士、言語聴覚士、臨床心理士を養成するコースもあります。

後藤:お医者さんや看護師さんや薬剤師さん以外にも、寄り添って健康を支えて下さる専門職は多種多様ですね。網岡先生は薬学部で薬剤師さんを育てる教育にたずさわっていらっしゃいますがどのような現状でしょうか?

網岡:30数年前は薬剤師が病棟の患者さんの所へ行くことについて、病棟の医師や看護師が抵抗を感じる時代がありました。今や病棟において薬剤師はなくてはならない存在になったと思います。同様に薬局薬剤師も地域医療を支える担い手になってきていると思います。またそういった薬剤師を育てるために薬学部では教育を行っています。

後藤:植村先生は実際にクリニックで働いていらっしゃって、日頃強く感じていることはありますか?

植村:薬局の薬剤師との関係を例にあげます。医師の処方内容を薬剤師の専門性によりチェックする疑義照会というものがあるですが、それを医師がかつては否定的にとらえていました。

後藤:疑義照会と言いますと、処方箋が薬剤師さんに届いた時に疑問に思ったことをお医者さんに質問し、疑問が晴れない場合は実際に処方を行ってはいけないという薬剤師法のルールでもあるんですよね。

植村:そうなんですが、処方権は医師にあるので、かつてはその疑義照会を好ましく受け止めない医師も多かったです。しかし薬剤師の観点で処方をチェックしてもらうということは、患者さんももちろんですが、医師を守る機能でもあると感じます。また今では薬剤師が患者さんの情報を得ることを希望しています。それを患者さんに対して服薬指導する時などに役立てているのだと思います。多職種連携は患者さんのためになるだけではなく、各職種が高め合うような良い効果にもなっています。

後藤:網岡先生はお医者さんと薬剤師さんとの間で医療情報を共有し、適確でわかりやすい服薬指導をできるようにする取り組みをなさってきました。

網岡:現在多くの病院で行われている、医師と薬剤師間の情報共有は、処方箋や患者さんのパーソナルな情報、検査の値など様々な患者情報が共有されています。そして、それを見ながら薬剤師が患者さんの状況を判断して服薬指導を行っています。過去には病棟の薬剤師には見ることができないような情報が、今ではほぼ全ての医療施設でオープンになっているということです。これは画期的なことです。さらに、病棟で薬剤師が電子カルテを見ながら薬剤管理業務を行うのと同じように、町の薬局の薬剤師が病院の医師と電子カルテを一緒に見ながら外来の患者さんの医療に関わる、といったところまで進んでいる病院もあります。情報の共有という部分では、医師と薬剤師とのハードルが低くなってきていて、これはとても良いことだと思います。 

後藤:植村先生も医療者間の情報共有の重要性についてご指摘されています。さらに情報共有の一角を担う患者さんやそのご家族を含む一般市民も、チーム医療に前向きに参加していくことが重要な時代とも言われています。それについて先生方はどのようにお感じになっていらっしゃるでしょうか?

植村:かつて多職種連携というと患者さんを中心として、各職種がそれぞれの専門性を発揮するという構図でスタートしていました。今は医療的な観点からも患者さんやそのご家族がチームメンバーであると認識されています。患者さんの回復や治癒に皆で協力するという形で、患者さんはプレイヤーであるという考え方です。医学に関する知識の問題はあるとしても、患者さんやそのご家族にしっかり情報を提供するというのは今や義務となっています。それはチームメンバー全員のためという考え方にもなっています。

網岡:例えば処方された薬を飲んだ後に、副作用があったり、薬が効いていないのではないかという心配があったりした場合、その情報を患者さんが自ら発信できることが大切です。過去の医療では医師の所に行って、何か聞かれると「はい」と答えるだけという状況が多かったと思います。患者さんが自ら「ここの具合が悪いんです」というように情報を発信できるようになってくると良いと思います。
 
 

 
関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報