健康ライブラリー

健康ライブラリー 2022年2月20日

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●教えてドクター 
★2月のテーマ「地域医療の現状と課題」(3)

北海道 美幌町立 国民健康保険病院 副院長
安井浩樹 先生

聞き手:CBC論説室 後藤 克幸


後藤:今週は超高齢社会の地域医療の課題の中でも特に重要な、スタッフ同士の連携と未来に向けた教育について伺います。

安井:前回お話ししましたように、医療には様々な専門職が関わっています。そしてそれぞれの職種が異なった情報や能力を持っています。それらの情報や能力をうまく組み合わせたり、共有したりすることが重要だと思います。これは多職種連携と言われており、教育現場や地域医療の現場では特に重要視されています。

後藤:私たちが医療を受ける時に寄り添って下さる専門職としては、医師、看護師、薬剤師さんまでは、比較的容易にイメージできるのですが、この他に多職種スタッフの中には、どのような専門職の方が活躍されているのでしょうか?

安井:超高齢社会ということをテーマにしますと、例えばリハビリに関する専門職については、体の動きなどをサポートする理学療法士、ご飯を自分で食べるというような具体的な生活をサポートする作業療法士、言葉や嚥下機能についてサポートする言語聴覚士があげられます。その他にも退院するためや退院してからのサポートをするメディカルソーシャルワーカーがあります。実は医療だけでは患者さんの生活が成り立たないことが多いです。必要に応じて介護を含めた生活全般のサポートが求められます。

後藤:そういった情報を提供して、その人に合った在宅の生活について助言をして下さるのがソーシャルワーカーの方々ということですね。

安井:そうなんです。例えばある入院患者さんが回復したので退院が可能となり、特別養護老人ホームや高齢者専用住宅への入居を勧めることがあります。その場合にそれぞれの施設では月にいくら程度お金がかかるのか?どんな特徴があるのか?といった情報を医師は全く持っていません。患者さんにとって毎月15万円かかるとか20万円かかるなどの情報も無く、退院先を選ぶのは難しいですよね。そこでお金のことも含めて様々な情報を提供するのがソーシャルワーカーです。

後藤:在宅での暮らしをどのようにしたら良いかの相談は、どんな職種の方が受けて下さるのでしょうか?

安井:まずはケアマネージャーさんになりますが、ケアマネージャーさんに担当してもらうためには介護保険の準備などが必要となります。そう考えますと本当に様々な職種が関わってきます。

後藤
:そのようなたくさんの職種となると、所属する団体や勤務先などもさまざまで、違っていると思います。どのように連携を進めるのでしょうか?

安井:以前、東日本の震災の後に岩手の沿岸部に伺ったことがあります。その際に多職種連携についてお話をしましたら、「そんなのは、できていますよ。それは当たり前じゃないですか?あえて多職種連携と言わなければいけない方がおかしいんじゃないでしょうか?」と言われました。沿岸部の小さな町でしたので、ケアマネージャーや薬剤師や医師がすべて知り合いでチームを作り独居の老人などのケアにあたっていました。逆に言うと今多職種連携の必要性が叫ばれている理由の一つに、後藤さんがおっしゃられたように各職種が所属している組織の違いがあります。そこには文化の違いなども含まれます。

後藤
:多職種連携について、先生がいらっしゃる北海道の現場ではどのようにされていますか?

安井:介護保険の研修会などの場を通じて色々な職種の方とコミュニケーションをとることを大事にしています。

後藤:若い医師やさまざまな多職種須スタッフの皆さんへの現場での実地教育にも携わっていらっしゃると思いますが、大切になさっているポイントは?

安井:職種間の心の壁を作らずに、必要な時にお互いに気軽にアクセスできるような関係を作って欲しいと思いながら教育に携わっています。そのためには学生のうちから、医学部の学生さん、看護学部の学生さん、薬学部の学生さん、福祉や医学療法や作業療法を学ぶ学生さんなど、様々な学生さんが一緒になって勉強する時間を作ることが大事だと思います。

後藤:私たち市民や患者・家族へのアドバイスがあればお願いします。

安井:多職種連携について医療の専門職だけのもののようにお話をしましたが、患者さんやそのご家族や医療職以外の職種の方も連携のチームに入ってくると思います。そういったすべての方々が連携した時に初めて良い多職種連携医療が行われると思います。医療については医療者にお任せということではなく、市民のみなさんや患者さんが自分自身の問題なんだと考えていただく意識が必要だと思います。
もちろん患者さん自身は体調が悪い時もありますので、そういった時に医療に参加して下さいというのは難しいのですが、元気な状態の時から自分たちの希望する地域医療とは何か?どんな医療が必要か?ということは、どんどん一緒に議論していきたいと思っています。

 
 

 
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