●教えてドクター |
愛知医科大学 内科学講座 教授・肝胆膵内科 副部長
伊藤清顕 先生
現在、B型肝炎に持続的に感染している方は日本人の約1%にあたる100-140万人程度と言われています。その中で約10%位の方が常に炎症を起こしている慢性肝炎で、その他の約90%の方は無症候性キャリアと言われ、肝臓の数値は正常な状態が続きほとんど治療を要しません。またそういった方々とは別に既往感染と言って過去に感染したことがある方々がいます。B型肝炎に一度でも感染しますと、核の中にB型肝炎ウイルスの遺伝子が残ってしまいます。それが一種の冬眠状態になり存在し続けるということになります。調査によると日本人の約20%~25%の方がそのような既往感染の可能性があると言われています。そういった方にどんな問題が起こるかと言いますと、通常の生活ではウイルスが出てくることはないのですが、抗がん剤治療を受けた場合や移植後やリウマチや膠原病にかかった場合に免疫を抑制する薬を使用すると、B型肝炎ウイルスが複製し出てきてしまい、それに対して復活した免疫が攻撃し肝炎を起こしてしまうことがあります。これはB型肝炎ウイルスの再活性化と言われて最近問題になっています。このような抗がん剤や免疫抑制剤の投与を受ける前には、過去にB型肝炎ウイルスに感染したことがあるかどうかを調べるということが大事です。B型肝炎ウイルス再活性化についてのガイドラインはしっかりできていて、まずはB型肝炎に感染しているかどうかを調べ、次に今感染していなくても過去に感染したことがあるかどうか抗体を調べます。今ウイルス自体が血液中に出ていなくても、PCR検査でウイルスのDNAが血液中に出ていないかを、抗がん剤や免疫抑制剤での治療中から治療後半年から1年位まで1~3カ月ごとに調べます。そこでウイルスが出てきたらB型肝炎に対する抗ウイルス剤を飲んでいただくことになります。疑問や不安は専門医やしっかりとした相談室にご相談いただくのが一番良いと思います。また、愛知医科大の肝疾患相談室(電話番号:0561-61-1878)へ、今日の放送への質問も含めご相談いただけます。