健康ライブラリー

健康ライブラリー 2022年1月16日

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●教えてドクター 
★1月のテーマ「ウイルス肝炎の正しい知識」

愛知医科大学 内科学講座 教授・肝胆膵内科 副部長
伊藤清顕 先生

C型肝炎の治療については著しく進歩しています。2種類の飲み薬をあわせて飲んでいただくことになりますが、治療期間として現在では最短で8週間です。そして治療期間中毎日飲み薬を飲んでいただくと99%程度ウイルスを排除できるようになりました。しかしB型肝炎の治療はなかなか困難で、ウイルスを完全に排除することは難しいです。実は私も研究費をいただきB型肝炎の新しい治療薬を開発するという研究を行っています。B型肝炎ウイルスを完全に排除するのが難しい一番の原因は、C型肝炎ウイルスは肝臓の細胞の核の中には入らないので排除が可能なのですが、B型肝炎ウイルスの場合は肝臓の細胞の核の中に入ってしまうことにあります。核の中に入るとB型肝炎ウイルスはcccDNAという非常に頑丈な形で核の中に残ってしまいます。細胞の核の中というのは人間の遺伝子も含まれていますので、B型肝炎ウイルスの遺伝子を攻撃しようとすると人間の遺伝子も傷つけてしまうことになります。そのためB型肝炎ウイルスを完全に排除することは難しいです。それに対して我々の研究は、核の中にB型肝炎ウイルスを入れないような薬の開発を行っています。細胞の表面にはB型肝炎ウイルスが細胞の中に入る受容体があるのですが、そこにB型肝炎ウイルスがくっつかないようにしたり、核の中に入る手前でブロックしたりして、新たに周りの細胞に広がらないような薬の開発に取り組んでいます。細胞には寿命がありますので、B型肝炎に感染している肝臓の細胞も1年ももちません。また感染している細胞は免疫に攻撃されますので、さらに早く壊されるはずです。ですので新たな細胞にウイルスが広がらなければ、いずれは排除できるという考えで研究を進めています。
 
 
●スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪
堺 宣博 さん(愛知医科大学病院 看護部・看護師)

特に力を入れていること
肝炎コーディネーターの資格を取得しておりますので、それを念頭においた活動に力を入れています。例えば病院内で行われる肝臓病教室の運営や肝炎・肝臓病に関する知識の普及や食事を含む生活面の指導を行っています。また、肝炎の患者さんに対する偏見などがいいまだに根強くありますので、その撲滅に向けた働きかけも行っております。さらに、新たな肝炎コーディネーターの育成にも励んでおります。

心に残るエピソード
院内の肝臓病教室での患者さん同士のやりとりが心に残っています。栄養士さんが肝臓病に関する栄養面での指導を、肝臓病をかかえる二人の患者さんに対して行っていた時のことです。私はその時コーディネーター(調整者)として関わっていました。二人の患者さんの内、Aさんは肝臓がんのステージ1、Bさんはステージ4でした。肝臓病の患者さんに対する栄養指導の内容は、どうしても塩分控えめでカロリーを制限するものとなります。ところが栄養士さんからの説明にAさんから「そんな制限ばっかりかけられたら人生つまらんじゃないか。好きな物を飲んで食べて死にたい。納得できない。」といった発言がありました。その時、隣にいたBさんが「僕なんかステージ4になっちゃったんだけどね。絶対食べ物には気を付けた方がいいよ。食事も工夫すれば好きな物が食べられるよ。たとえばね・・・」というようにおっしゃいました。AさんにとってBさんは肝臓がんステージ4である大先輩です。Bさんの突然のステージ4のカミングアウトに少し驚きながらも、その後のBさんからの助言に対しては、「そうか、そうか。」と聞いてスムーズに受け入れられたようでした。そしてその後の肝臓病教室は本来の栄養指導という趣旨から少し脱線し、お互いの趣味の話から生活面の愚痴などに話がそれてしまうことも多くありました。そして終始和やかな雰囲気で進んでいきました。肝臓がんと聞くとシビアな状況を思い浮かべられるかと思います。そのような状況の患者さん同士のやりとりを聞き、同じがんをかかえる患者さん同士でしか共有できないものもあるのだなと思いました。そういったきっかけ作りの場でもある肝臓病教室に立ち会えたことは大変勉強になりました。

今後の抱負
患者さんと関わる時間を多く持つことができるのは看護師であると自負しております。ところが肝炎の知識を持った看護師は院内にまだまだ少ないです。消化器系の病棟だけでなくその他の多くの病棟にも肝炎の患者さんが入院されることがあるので、すべての部署に肝炎の知識をもった看護師が存在することができるように、今後は肝炎の知識を持つスタッフの育成にも尽力していきたいと考えております。
 
 

 
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