健康ライブラリー

健康ライブラリー 2022年1月2日

[この番組の画像一覧を見る]

●教えてドクター 
★1月のテーマ「ウイルス肝炎の正しい知識」

愛知医科大学 内科学講座 教授・肝胆膵内科 副部長
伊藤清顕 先生

肝炎とは肝臓に炎症を起こす病気で、ウイルスが原因のウイルス性肝炎と自分の免疫が肝臓を攻撃することが原因の自己免疫性肝炎などがあります。ウイルス性肝炎と認められているものにはABCDEの5種類があります。その中でもA型とE型は経口感染(口から入る感染)によっておこる肝炎です。A型肝炎は、主にウイルスに汚染された海水などが付着した魚介類を生で食べることにより起こります。E型肝炎は人畜共通感染や人獣共通感染と言って、猪や鹿や豚などの動物にも感染します。そういった動物の生肉や加熱が十分でない肉を食べることによって人に感染することがあります。A型やE型のような経口感染は、ほとんどの場合は一過性の感染で終わります。しかし、一部の症例で重症化し、重症化した場合には持続的な透析が必要となったり移植が必要となったりと命を救う治療を必要とする場合もありますが、基本的にはウイルスに対する治療というものはありません。食事ができなければ点滴をしたり、入院して安静にしたり、といったことで改善すればウイルスはいなくなります。D型肝炎は特殊で、B型肝炎の外側の部分を使って増えるのですが、日本では多くありません。B型肝炎とC型肝炎は血液を介して感染する血液感染によって起こります。B型肝炎は急性肝炎の原因となりますが、成人感染では一部が慢性化します。B型慢性肝炎の多くの方は、母子感染や幼少期の感染が原因となっています。C型肝炎も急性肝炎の原因となりますが、多くのケースで慢性肝炎に移行します。そして慢性肝炎が持続すると肝硬変や肝臓がんの原因になります。この慢性肝炎の状態ではほとんど症状が出ませんので、血液検査をしなければわかりません。早く血液検査をして早期に発見をして、治療につなげることが大事になります。
 
 
●スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪
谷 浩也 さん(愛知医科大学病院 中央臨床検査部・技師長)

特に力を入れていること
私が勤務する中央臨床検査部は採血や採取した血液の成分を分析する検体検査、心電図検査や肺機能検査、超音波検査など、患者さんの体に直接触れて行う生理検査をメインの業務としています。今月のテーマに関連する「ウイルス性肝炎」に関する検査はB型肝炎の感染の有無を確認するHBs抗原検査を1日平均90~100件程度、C型肝炎の感染の有無を確認するHCⅤ抗体検査を1日平均80~90件程度実施しています。同様に生理機能検査では、B型肝炎やC型肝炎の治療をされている患者さんのフォローアップとして腹部超音波検査を1日に2、3件実施しています。これらの検査を実施する際に我々が心がけていることは、患者さんの待ち時間を極力短くし、気持ちの良い接遇をしつつ正確かつ迅速に検査を実施することです。それらの点に注意し検査部員一同業務に取り組んでいます。

心に残るエピソード
中央臨床検査部では検体検査と生理検査に付随する業務として、検査相談を実施しています。これは患者サービスの一環であり、臨床検査の解釈に必要な情報を提供するものです。通常はご自分が受けた検査項目の臨床的意義や基準範囲などについて説明させていただくことが多いのですが、ある時「感染症検査の結果解釈について教えて欲しい。」という相談がありました。感染症検査は感染の有無を診断するためまずスクリーニング検査を行い、それが陽性となった場合、精密検査を実施し、その結果をもって感染の有無を判断します。その患者さんは精密検査の結果が陰性でしたので、主治医の先生からは感染していない旨の説明を受けたそうです。ところがスクリーニング検査に陽性との記載があったため、それが心配で夜も眠れないという訴えでした。そこでスクリーニング検査と精密検査の違いを丁寧に説明し、先生が大丈夫だと説明された内容を再度繰り返したところ、その患者さんは納得されてとても安堵した表情になりました。そして帰られる際は深々と頭を下げて笑顔で帰って行かれました。あの笑顔を見て我々は、臨床検査の重要性とそれをきちんと説明する大切さを再確認しました。
 
 

 
関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報