●教えてドクター |
名古屋大学 医学部附属病院 老年内科 教授
葛谷雅文 先生
薬の服用のタイミングについて、例えば朝昼晩のしかも食前食後にも服用しなければならないとすると誰でも飲み忘れることがあると思います。ですからできるだけシンプルに処方してもらうことが必要です。薬の飲みすぎには気を付けても、薬の飲み忘れには不注意になりがちですが、飲み忘れにも注意が必要です。例えば当院に救急車で入ってこられる方の中にも、必要なお薬が飲めていなかったことが原因の方もいらっしゃいます。先生は必要であると判断して薬を処方していますので、しっかり飲む必要があります。もし処方された薬に不信感を持っている場合は自己判断で服用をやめるのではなく、早めに先生に相談する必要があります。そして薬の服用をやめたり、薬を変更したりするといった際には、先生の指示に従うことが重要です。例えば高血圧の薬を飲み忘れてしまうと血圧が高くなりますし、糖尿病の薬を飲み忘れてしまうと血糖が高くなります。こういったことはすべての薬について言えますので、必要な薬はしっかり継続して飲んでいただく必要があります。認知症と向き合っていらっしゃる患者さんにとって薬を飲み忘れないということは難しくなってきます。認知症の患者さんへの薬の処方については、医療者側からと患者さん側からと双方から考えなくてはなりません。医療者側はできるだけ服薬しやすいような処方を心がける必要があります。認知機能が低下した高齢者に朝昼晩ごとに食前食後の薬を正確に飲むことを求めるのはほぼ不可能です。ですので医療者側は無理なく飲めるような処方をする必要があります。患者さん側はご自分でも忘れないような工夫をすることが必要です。またご自分だけでは忘れてしまう場合はご家族のサポートが必要です。同居していらっしゃるご家族は患者さんが薬を飲んだか飲まないかを確認できますし、同居していらっしゃらないご家族も電話で確認したり、時々家を訪れて薬の残りを確認したりするということができます。薬の残りを確認する際に余っていれば飲み忘れていることが考えられますし、足りなくなっていれば飲み過ぎていることが考えられます。そのようなご家族の協力はとても重要です。以前は朝昼晩に服用するタイプの薬が多かったのですが、今は薬が体の中から無くなるスピードが遅い薬も増えてきて、1日1回服用するだけで24時間効果を保てる物もあります。種類によっては1週間に1回の服用で済む薬や1カ月に1回の服用で済む薬もあります。先生方に相談しながら場合によっては「なるべく飲みやすい薬の処方の仕方をして欲しい。」と伝えても良いと思います。