健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年12月19日

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●教えてドクター 
★12月のテーマ「高齢者の健康維持と服薬の課題」

名古屋大学 医学部附属病院 老年内科 教授
葛谷雅文 先生

薬の服用のタイミングについて、例えば朝昼晩のしかも食前食後にも服用しなければならないとすると誰でも飲み忘れることがあると思います。ですからできるだけシンプルに処方してもらうことが必要です。薬の飲みすぎには気を付けても、薬の飲み忘れには不注意になりがちですが、飲み忘れにも注意が必要です。例えば当院に救急車で入ってこられる方の中にも、必要なお薬が飲めていなかったことが原因の方もいらっしゃいます。先生は必要であると判断して薬を処方していますので、しっかり飲む必要があります。もし処方された薬に不信感を持っている場合は自己判断で服用をやめるのではなく、早めに先生に相談する必要があります。そして薬の服用をやめたり、薬を変更したりするといった際には、先生の指示に従うことが重要です。例えば高血圧の薬を飲み忘れてしまうと血圧が高くなりますし、糖尿病の薬を飲み忘れてしまうと血糖が高くなります。こういったことはすべての薬について言えますので、必要な薬はしっかり継続して飲んでいただく必要があります。認知症と向き合っていらっしゃる患者さんにとって薬を飲み忘れないということは難しくなってきます。認知症の患者さんへの薬の処方については、医療者側からと患者さん側からと双方から考えなくてはなりません。医療者側はできるだけ服薬しやすいような処方を心がける必要があります。認知機能が低下した高齢者に朝昼晩ごとに食前食後の薬を正確に飲むことを求めるのはほぼ不可能です。ですので医療者側は無理なく飲めるような処方をする必要があります。患者さん側はご自分でも忘れないような工夫をすることが必要です。またご自分だけでは忘れてしまう場合はご家族のサポートが必要です。同居していらっしゃるご家族は患者さんが薬を飲んだか飲まないかを確認できますし、同居していらっしゃらないご家族も電話で確認したり、時々家を訪れて薬の残りを確認したりするということができます。薬の残りを確認する際に余っていれば飲み忘れていることが考えられますし、足りなくなっていれば飲み過ぎていることが考えられます。そのようなご家族の協力はとても重要です。以前は朝昼晩に服用するタイプの薬が多かったのですが、今は薬が体の中から無くなるスピードが遅い薬も増えてきて、1日1回服用するだけで24時間効果を保てる物もあります。種類によっては1週間に1回の服用で済む薬や1カ月に1回の服用で済む薬もあります。先生方に相談しながら場合によっては「なるべく飲みやすい薬の処方の仕方をして欲しい。」と伝えても良いと思います。
 
 
●スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪
白松貴子 先生(愛知学院大学 薬学部)

特に力を入れていること
現在、名古屋大学医学部附属病院の薬剤師外来の一つ「いきいき脳活性お薬教室」を担当しています。予約制でご家族ごとに個室で対応していますので周囲を気にせずお話ししていただけます。テキストを使って認知症の症状が進むのを遅らせるお薬の説明を中心にしていますが、市販薬や健康食品などとの飲み合わせに関すること、飲み忘れ防止の相談、困ったことや疑問に思うことなど、何でも話しやすい雰囲気作りを意識しています。ご家族にも病気や薬について理解していただくことは、服薬管理への協力や副作用の早期発見にもつながっていると感じます。患者さんやそのご家族から学ばせていただくことも多々ありますが、少しでも誤解や不安を解消していただけるよう努めています。

心に残るエピソード
患者さんのご家族から「お薬カレンダーや服薬ボックスなどを使っていても飲み忘れが目立つようになったので薬を手渡しするようにしていましたが、最近は手渡ししても薬を飲んでいないことが増えて困っています。」とご相談を受けました。薬を飲んだことを確認するよう提案しましたが、「朝食を終えるのを待っていると、仕事に遅刻してしまう。」と確認は難しそうでした。食事の影響によって十分な効果が期待できなかったり、作用が強く出すぎてしまったりする薬があります。また、飲み合わせによっては飲むタイミングに考慮が必要な薬もあります。その患者さんの状況を踏まえ、朝食前に薬を飲むことを提案しました。
その後ご家族から「飲み忘れが無くなって良かった。安心して仕事に行けます。」と言っていただけました。問題が解決でき、ご家族にも喜んでいただけたことを私自身もとても嬉しく思いました。

今後の課題・抱負など
代謝や排泄機能が低下傾向にある高齢者は、若年者と比較し薬による好ましくない症状がみられることが多くあります。また、視力や認知機能の低下により薬を誤って使用してしまうことや、細かい作業が困難な為に小さな薬を取り出すことが難しい方もいらっしゃいます。高齢者には、個々の状況に合わせた細やかな対応が必要だと感じています。
医療従事者、患者さんやそのご家族と連携しながら有効で安全な薬物治療に関わっていきたいと思います。

 
 

 
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