健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年12月12日

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●教えてドクター 
★12月のテーマ「高齢者の健康維持と服薬の課題」

名古屋大学 医学部附属病院 老年内科 教授
葛谷雅文 先生

一人の患者さんがたくさんの薬を飲んでいると、その中に副作用を起こしやすい薬があったり、飲み合わせが悪い薬があったりする場合があります。それをポリファーマシーと言います。日本語で表すと、多くの薬という造語になりますが、服用している薬の数だけではなく、不適切なものが含まれていると良くないという意味で、ポリファーマシーという言葉を使用しています。様々な病気に対して、専門の学会が薬のガイドラインを出しています。こういった病気の場合はこういう薬を投与するのが一番良いといったことが記されています。ところが高齢者の場合は一つの病気だけにかかっているとは限りません。仮に3つも4つもの病気についてガイドライン通りに薬を飲むと十種類以上にもなってしまいます。そういった場合は「今この患者さんにとってどの薬が一番必要か?」という優先順位をしっかりつけて、医師が薬を選択するということが必要です。その際、もちろん専門医の役割は重要ですが、各専門医がご自分の担当の病気だけについて考えて薬を処方すると、一人につき十種類以上もの薬を処方することになってしまう場合もあります。ですので、専門医以外にも自分の体全体をみて下さる「かかりつけ医」の先生を一人決めておき、その先生に自分が今飲んでいる薬をトータルでみていただくと大変良いと思います。薬剤師さんも以前はクリニックや病院の前にある門前薬局として薬を出していたことが多かったです。しかし最近、国はかかりつけ薬局を持つことをすすめています。かかりつけ薬局があれば、色々なクリニックからもらった処方箋をその薬局に持っていくことにより、処方されているすべての薬を把握してもらうことができます。そうすることによって、飲み合わせの悪い薬や余分な薬が入っていた場合に、かかりつけ薬局から処方医にその情報を共有してもらえます。まだ十分広がっていないかもしれませんが、そのような方向に進んでいますので、かかりつけ医を持つのと同じように、かかりつけ薬局を持つことが今後重要になってくると思います。
 
●スマイルリポート~地域の医療スタッフ探訪
平井 佳彦 先生(アールエス薬局 薬剤師)

特に力を入れていること
薬局業務の一つとして、在宅医療にも取り組んでいきたいと思い、ケアマネージャーさんや訪問看護師さんとのコミュニケーションを大切にしています。そして時間的に参加が難しいことが多いのですが、地域のケアマネージャーさんや訪問看護師さんや介護職員の方々が集う事例検討会や地域包括ケア協議会等に出席させていただき、まずは顔を覚えていただくように取り組んでいます。

心に残るエピソード
薬局業務では患者さんの自宅へ訪問しお薬の管理をさせていただくこともあります。その時に大量のお薬が紙袋いっぱいに余っていて「何年前の薬だろう?」と驚くことがありました。お薬が余っていた理由は、お薬の種類や量が多くて飲み忘れたり、飲み方がわからなくなったり、その時の体調によって飲まないことがあったり、ということでした。特に高齢の患者さんは複数の疾患の治療されていることが多く、お薬の種類や量が多くなり、管理が難しくなることがあります。そういう方には一包化調剤といって、朝、昼、夕、寝る前と、服用するタイミングが同じお薬を一袋ずつパックすることもできます。患者さんの希望によってお名前や、「朝食後」「夕食後」などの飲むタイミングや、日付などの印字をすることもできます。一包化することによって飲み間違いや飲み忘れが無くなり、症状の悪化を防ぐケースもあります。先ほど申し上げた患者さんも医師へ一包化調剤の依頼をさせていただくことにより、「お薬の飲み忘れや飲み間違いがなくなりとても助かった。」と言っていただけました。希望される方は一度薬局へ行った際、気軽に薬剤師に相談してみて下さい。もしくは電話で相談してみて下さい。薬剤師から医師へ提案することもできますので、宜しくお願い致します。医師、看護師、ケアマネージャー、介護職員の方々と患者さんの情報を共有し、患者さんに対して薬剤師は何ができるのかを考え、客観的に分析する力を身に付け、お薬による副作用の症状の見落としなどに注意し、患者さんの健康維持の手助けが少しでもできればと考えています。
 
 

 
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