健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年11月14日

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●教えてドクター 
★11月のテーマ「コロナ禍の妊娠出産」

名古屋大学医学部附属病院 産婦人科 教授
梶山広明 先生

基本的には妊娠中や授乳中であっても新型コロナウイルスのワクチンを受けていただく方が良いと思います。自分や赤ちゃんを守るという意味で、日本産科婦人科学会や厚生労働省からも、妊娠中の新型コロナウイルスのワクチン接種は推奨されています。妊娠中のワクチン接種の時期ですが、いつでも良いとされています。またワクチン接種による胎児への影響は基本的には無いと言われています。ワクチン接種後の副反応の有無に関わらず、妊娠の異常(流産や早産)のリスクも上昇しないと言われています。お母さんの胎盤を通してのワクチンの影響ですが、ある程度ワクチンの成分の一部が赤ちゃんの方へ移行すると言われていますが、ワクチンの良い面(免疫力の増大など)が移行することはあっても、ワクチンの悪い面が赤ちゃんの方へ移行して悪影響を及ぼすということは、今のところ考えられていません。一般的なことなのですが、ワクチン接種を行うと発熱などの副反応があると思います。妊娠中にワクチン接種を行い、発熱が起こった場合には、妊娠中でも安全に服用できる薬もありますので、かかりつけ医の先生にご相談いただければと思います。
 
●スマイルリポート地域の医療スタッフ探訪
安田あゆ子 先生
(医療の質・安全学会 副理事長、藤田医科大学病院 医療の質管理室 教授)


特に力を入れていること
世界保健機関(WHO)が世界患者安全の日というものを3年前から設定しています。それに沿ったテーマについて現在学会で取り組んでいます。今年のテーマは「安全な分娩と新生児医療」です。そのテーマに沿って現在、国内の妊婦さんや産まれたお子さんの医療に関わっている関係者のみならず、救急や麻酔の専門家や病院システムの運営に関わる患者安全の専門家などが集い、妊産婦安全共同プロジェクトというものを始めました。これのプロジェクトは産まれてくる大切な命と、それをはぐくむ大切な母体のために、医療による害の無い世界を目指すといったことを考えるものです。一人では変えられない医療システム全体の問題を、皆で検討することを目標としています。このプロジェクトでは、9月20日に世界患者安全の日に合わせて、シンポジウムを行い、全国から200名以上の方にご参加いただきました。海外の動向や国内の状況やお産の安全性を高める様々な取り組みについて、専門家からの講演や参加者を含めた討論が行われ、方向性が見えてきたところです。

心に残る問題
海外の特に開発途上国では、お産に際してお母さんや赤ちゃんが命を落としてしまうことが問題になっています。シンポジウムの中で印象に残っているのは、途上国の周産期の緊急対応が遅れてしまう理由として、妊婦さんが受診しようと思う気持ちが遅れてしまう、病院に到着することが遅れてしまう、治療自体が遅れてしまう、といった3つがあげられていました。そしてその背景には各国の経済や社会インフラや教育の問題などがあるということでした。この話を聞いて、これは途上国だけの問題ではないのではないか?と思いました。強化すべきは、妊婦さん自身の受診の遅れをなくすということです。どのように妊婦さんと赤ちゃんに、自分たちを救うチームの中に入っていただくかということが重要ではないかと思います。

今後の課題
日本のこれまでの周産期医療の安全性向上には、データをとってそれを共有してきたことがとても重要な役割を担っていると思います。現在、色々な理由で亡くなられる妊婦さんは、国際的なデータと比較して日本は非常に少なく、年間数十名のレベルまで減っていて、これは世界に誇れることです。ただその数字には表れない、今まで通りの生活が送れなくなってしまったりした方などのデータは取得できていません。医療をさらに良くしていくためには、医療者が自分たちで診療の基準を決めて、それができているかというデータをとる取り組みが今後求められるのではないかと思います。
 
 

 
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