健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年10月31日

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●教えてドクター 
★10月のテーマ「呼吸器外科の病気」

名古屋大学医学部附属病院 呼吸器外科学教授
芳川豊史 先生

日本では1998年に初めて肺移植が行われました。その後徐々に増えて現在では累計で900例弱の肺移植が日本で行われています。年間では80例位となります。肺移植については適応などを理解している医者が増えることが重要だと思います。実は、現在東海・中部地域で肺移植を実際に行っている施設はまだありません。昨年、藤田医科大学が肺移植実施施設に認定され、少しずつ実運用に向かっています。そして実は名古屋大学でも肺移植の準備が始まっています。名古屋大学は、肺移植実施施設ではありませんが、既に10人以上の肺移植術前後の患者さんを定期的に診ております。今後、肺移植の中核となる病院が中部・東海地区に複数できて、この地区の肺移植医療がしっかりとした基盤を持って行われていくことが重要だと思います。移植が行われる際のコーディネーターですが、大きく分けて、ドナーとそのご家族のケアをするドナーコーディネーターと、移植病院で移植を待つ患者さんのケアをするレシピエントコーディネーターがあります。この2つのタイプのコーディネーターについて、制度はできたのですが、まだ完全にサポートができている状況ではありません。実際、コーディネーターの数も足りていませんし、色々なシステムをサポートしていく必要がまだまだあると思います。肺移植の医療は苦しい思いをしている患者さんの最後のとりでとなる可能性のある医療です。肺移植の適応があるかどうかの判断はなかなか難しいのですが、適応の可能性があると思われる場合は、地元の先生を通して肺移植について理解している施設を紹介してもらい、適応の可能性があるかどうかを早く調べてもらうことが非常に重要です。適応が無いと言われるかもしれませんが、適応があるか無いかは経験のある専門の先生に相談しなければわかりません。これはある意味患者さんにとって知る権利です。しっかりとかかりつけの先生と相談して知る権利を行使しても良いと思います。
 
 
医療コラム 名古屋市認知症相談支援センターの動画配信の取り組み
論説室 後藤 克幸

なかなかおさまりが見えてこない新型コロナウイルスの感染拡大ですが、この感染拡大の影響が医療現場や私たちの社会だけでなく、地域の介護や福祉に携わっていらっしゃる方や認知症の方、そのご家族にも大きな影響が及んでいます。

認知症の人とその家族を支援する名古屋市認知症相談支援センターでは、2015年の開設以来、認知症になっても住み慣れた地域で生活を続けられるようにサポートをしてきています。例えば地域で開かれる認知症カフェの支援、認知症の当事者や家族の交流会、認知症当事者が自らの体験を語る講演会など様々な催しを積極的に開催してきました。ところが新型コロナウイルスの感染拡大によって、こうした人と人が集まる催しが開けなくなってしまっています。

認知症の人やその家族の中には、「人の役に立ちたい」という思いから積極的に講演会の講師などを引き受けて下さった人達が多くいらっしゃいましたが、このような状況の中で「やることが無くなってしまって、張り合いが無い」などの声が上がっています。このように、コロナ禍で人と人が会うことが難しい状況の中、「認知症の人とその家族が孤立しないようにするにはどうしたら良いか?」また、「家族の交流の場や、本人が生き生きと活躍する場をどのようにサポートすれば良いのか?」と認知症相談支援センターでは深刻な問題に頭を悩ませました。

こうした中、対面で会えなくてもビデオ動画の形で認知症当事者の人達がつながったり、様々な情報を発信したりする機会を作ろう、と考えた認知症相談支援センターが新しい取り組みを始めました。去年の夏頃から、認知症の人とその家族に、センターの職員がインタビューをして、それを収録する形で動画を作成し、YouTubeで配信を始めました。当事者の人達が認知症となって強く感じた不安や、家族に対する思い、さらに介護する家族の人たちからは、認知症の人に接するうえで一番大切にしていることなど、とてもリアルで説得力のある言葉をこの動画の中で語って頂きました。自分の体験談が、同じ悩みを持つ人たちの参考になればとの思いで、優しい語り口で丁寧な言葉を紡いで下さっています。

この動画はYouTubeで『名古屋市認知症相談支援センター』とキーワードを入力するとページが開きます。是非一度ご覧になって下さい。認知症の当事者や家族が出演する動画の配信は、コロナ禍で直面した困難に立ち向かうために発案した取り組みですが、しかし、認知症相談支援センターでは「人と家族を支える基本は、人と人の出会いと交流を通じた情報の共有にある」と話しています。新型コロナウイルス感染拡大の1日も早い終息を願ってやみません。
 
 

 
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