健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年10月17日

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●教えてドクター 
★10月のテーマ「呼吸器外科の病気」

名古屋大学医学部附属病院 呼吸器外科学教授
芳川豊史 先生

肺がんの主な治療というのは外科治療、放射線治療、そしてお薬を使った抗がん剤や分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤などを使った内科的治療があります。早期にがんが見つかった場合は外科治療が選ばれます。残念ながら肺がんにおいては、今のところしっかり治すための治療法として、十分な証拠がある医療としては外科治療しかありません。放射線治療に関しては早期に見つかった肺がんの一部において、外科治療に追いつくようなデータがでてきています。抗がん剤については、この10年位で非常に進歩しています。以前はたくさんのお薬を点滴によって投与されて、吐き気をもよおすような大変な治療でしたが、現在では外来でも治療が受けられたり、飲み薬で点滴と同じくらいの効果があるものがでてきたりしています。しかし完全に治すということは難しいので肺がんと上手くつきあっていくということになります。そしてピッタリ合う薬が見つかった場合には、外科治療に近い効果が得られる患者さんもいらっしゃいます。ピッタリ合うお薬を見つけるために遺伝子の情報を活用することもあります。遺伝子の変異を上手く見つけて、それにピッタリ合うお薬を選び、それを使って治療を行うということになります。世界中の臨床家や研究者が、日々新しい治療を目指してがんばって開発に取り組んでいます。
 
 
●スマイルリポート地域の医療スタッフ探訪
加藤圭子 さん(ハートフルハウス居宅介護支援事業所 管理者・社会福祉士)

特に力を入れていること
私は介護保険を利用されている要介護や要支援の方のケアマネージャーを担当しています。現在200名位の方を7人のケアマネージャーで支援させていただいています。介護の現場では新型コロナウイルスの蔓延により、高齢者の方が閉じこもりがちになり、そのため心身機能が衰えてしまうことが心配されています。「感染対策はしていますので必要以上に怖がらずに人と触れ合い体を動かしましょう」とお誘いするようにしています。最近は若い世代での新型コロナウイルスへの感染が増えていますので、同居のご家族にも体調に変化があった場合は早めの受診をお願いし、高齢者への感染予防を意識しています。

心に残るエピソード
介護保険制度が始まった2000年からケアマネージャーをしていますので、本当に多くの方の人生の最終段階に関わらせていただき、心に残るエピソードはたくさんありますが、その中で、ある肺がんの男性のエピソードをご紹介します。数年前地域包括支援センターから「Aさんという方があなたにケアマネージャーを頼みたいとおっしゃっています。」と連絡がありました。Aさんというお名前を聞いてびっくりしました。以前Aさんの奥様を担当していたからです。奥様を献身的に介護して見送ったAさんが、ご自身が肺がんになり、すでにできる治療もなくなり、自宅で最期を迎えたいとのことでした。久しぶりに病室でAさんに再会した時はお互いに胸がつまり言葉になりませんでした。一人暮らしのAさんは近所のクリニックの先生や訪問看護師さんやヘルパーさんに家へ来てもらい、寝たきりになってもデイケアに通い、最期の日々を穏やかに過ごしました。そして最愛の奥様の仏壇の前に置いた介護ベッドの中で希望通り一人で旅立たれました。優しいAさんの笑顔が今でも心に残っています。

今後の課題
ケアマネージャーの仕事がどんどん変化していることを実感しています。この20年間で一人暮らしの方や高齢のご夫婦二人暮らしの方や、8050問題と言われるような独身のお子さんと高齢者との二人暮らしの方がとても増えました。また社会の変化により、家庭の中で経済的な問題をはじめ複数の課題を抱えるケースが増え、介護保険の中だけで支援することが難しく、ケアマネージャーだけでは力不足のことも多くなってきました。ケアマネージャーは利用者のより良い生活のために、医療や介護だけではなく幅広い他の専門職や地域の力も借りて、より広いチームで支援するための連携力を身につけることが必要だと思います。私は事業所の管理者として、個々のケアマネージャーが周囲と連携する力をつけて、一人で抱え込むことなく、より良い支援ができるような環境を整えることによって、地域の様々な関係機関がお互いに連携できる体制づくりに力を入れていきたいと思っています。
 
 

 
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