●教えてドクター |
名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター
大山慎太郎 先生
様々な患者さんの病状に応じて個別に医療を提供する、オーダーメイド的な医療を行う際にもAIを活用する流れがでてきています。抗がん剤の治療を行う時に医師は、がんの種類やがんの進行段階、また想定する治療に患者さんが耐えられるかどうか、といったことを総合的に判断しながら治療を決定します。これは一般的にはガイドラインと呼ばれる指針に従って行われていることが多いですが、必ずしも患者さんの個人差に寄り添ったものではありません。AIはその部分に大きな変革をもたらす可能性があります。オーダーメイド治療とは、例えば同じ種類のがんで同じ段階のがんの方に対しても、個々人の薬剤への反応性の違いや遺伝子の違いなどの情報を上手く反映して、治療選択をより精細に行い、より効果的な支援を行うことです。AIの活用のためにはたくさんの情報をあらかじめ集めて、その情報から結論を導き出す必要があります。そのため国内ではがんの患者さんの遺伝子の情報を集める取り組みが盛んにおこなわれています。2018年に国立がん研究センター内のがんゲノム情報管理センターでは遺伝子異常に由来するがんの情報を集めています。まアメリカの女優アンジェリーナジョリーさんは乳がんのリスクとなる遺伝子を有していると判断され、またその遺伝子があることで乳がんになるリスクが85%位あると診断されました。それがわかった時点で彼女は乳房を予防的に切除するという選択をし、この出来事でオーダーメイド医療は一躍脚光を浴びました。これまではがんについての遺伝子情報がなく、がんが発覚してから治療の判断を行っていましたが、今では患者さんがあらかじめ予防的に対処するという選択の余裕ができました。今後このような選択も可能となってきます。こういった判断にもAIが介入するのですが、特に発展途上国をはじめとした、医師や医療従事者が少ない国々ではAIの医療現場での普及が特に進んでいます。こういった状況の中、AIが非常に高い能力を示すこともあり、医療経済的にも効果的であるということがわかってきています。それを受けて日本の医療の状況も大きく変わってきています。皆さんが病院で受ける治療や病院で受けるサービスにAIが大きく介入していくのも近いのではないかと思います。