健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年9月26日

[この番組の画像一覧を見る]

●教えてドクター 
★9月のテーマ「AIと医療」

名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター
大山慎太郎 先生

様々な患者さんの病状に応じて個別に医療を提供する、オーダーメイド的な医療を行う際にもAIを活用する流れがでてきています。抗がん剤の治療を行う時に医師は、がんの種類やがんの進行段階、また想定する治療に患者さんが耐えられるかどうか、といったことを総合的に判断しながら治療を決定します。これは一般的にはガイドラインと呼ばれる指針に従って行われていることが多いですが、必ずしも患者さんの個人差に寄り添ったものではありません。AIはその部分に大きな変革をもたらす可能性があります。オーダーメイド治療とは、例えば同じ種類のがんで同じ段階のがんの方に対しても、個々人の薬剤への反応性の違いや遺伝子の違いなどの情報を上手く反映して、治療選択をより精細に行い、より効果的な支援を行うことです。AIの活用のためにはたくさんの情報をあらかじめ集めて、その情報から結論を導き出す必要があります。そのため国内ではがんの患者さんの遺伝子の情報を集める取り組みが盛んにおこなわれています。2018年に国立がん研究センター内のがんゲノム情報管理センターでは遺伝子異常に由来するがんの情報を集めています。まアメリカの女優アンジェリーナジョリーさんは乳がんのリスクとなる遺伝子を有していると判断され、またその遺伝子があることで乳がんになるリスクが85%位あると診断されました。それがわかった時点で彼女は乳房を予防的に切除するという選択をし、この出来事でオーダーメイド医療は一躍脚光を浴びました。これまではがんについての遺伝子情報がなく、がんが発覚してから治療の判断を行っていましたが、今では患者さんがあらかじめ予防的に対処するという選択の余裕ができました。今後このような選択も可能となってきます。こういった判断にもAIが介入するのですが、特に発展途上国をはじめとした、医師や医療従事者が少ない国々ではAIの医療現場での普及が特に進んでいます。こういった状況の中、AIが非常に高い能力を示すこともあり、医療経済的にも効果的であるということがわかってきています。それを受けて日本の医療の状況も大きく変わってきています。皆さんが病院で受ける治療や病院で受けるサービスにAIが大きく介入していくのも近いのではないかと思います。
 
 
医療コラム 長期入院療養の高校生にオンライン授業参加の機会を!
論説室 後藤 克幸

長期入院療養する子どもたちのための学校教育は今、現状どうなっているのでしょうか?小中学校については義務教育ですので、病院内に院内学級が設置され、教師の訪問授業を受けることができる環境が整備されています。ところが高校は義務教育でないという理由で、高校生が病院で長期療養する場合、公的な支援の対象外となってしまうのです。そのため、休学や退学を迫られる厳しい現実に直面します。

こうした現状を改善するため、名古屋大学病院の小児科医やソーシャルワーカー、県内の主な病院の小児科医、さらに当事者の高校生と家族200人余りによって「病気療養中の高校生のオンラインによる授業参加を実現する会」という組織が作られ、入院中でもインターネット回線を活用したリモート授業の形で高等学校の授業に参加できる環境の整備を求める要望書を、8月11日、愛知県に提出しました。

県立高校の場合は週に3回学校の訪問教育が提供されるのですが、1回の訪問時間は2時間で、1年間の単位を取得するには十分ではありません。要望書には「コロナ禍でリモート回線を利用した遠隔授業の可能性とその環境は整いつつある。高校が義務教育ではないとはいえ、現状では、ほとんどの子どもたちが高校へ進学している。高校生の長期入院療養者に対して、学校と病室をインターネットでつなぐオンライン授業に参加できる環境を整備することが求められている」という主張が記されています。

こうした環境を整えることは、長期療養中の高校生の学習意欲と闘病意欲の向上につながり、さらに、クラスメイトにとっても、多様な立場の仲間への配慮や支援について学ぶ貴重な機会にもなります。愛知県は、この要望を受けて、「来年度中の実現を目指し準備を進めたい」と、前向きな意向を示しています。要望の実現の可能性が高まっています。
 
 

 
関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報