健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年9月19日

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●教えてドクター 
★9月のテーマ「AIと医療」

名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター
大山慎太郎 先生

昨今、各分野で非常に高いレベルの医療を提供できるようになっています。その反面1人の医師が高いレベルの医療を提供することに限界が生じてきています。専門医が適切な部分でアシストしあうという理想的な状況であれば最高の医療が提供できるのですが、各専門医がすべての患者さんを診られるわけではないので、症状を見落としたり、検査結果を上手く治療に反映できなかったりといったことが生じます。臨床意思決定支援の仕組みはそういったことを補って、1人の医師が様々な科の知識を持たなくてもAIがサポートしてくれるというコンセプトです。重症の患者さんを集中治療室で治療することも多いのですが、そのその患者さんの症状が良くなってきた場合、一般病棟に移っていただくという選択をします。しかし一般病棟に移ってもまた症状が悪化してしまって集中治療室に戻るということもあります。たくさんの情報から判断できるAIをこの臨床意思決定支援に入れることによって、本当は集中治療室から一般病棟に移ってはいけない患者さんについて予測し、集中治療室で症状が完全に良くなるまで治療を行うということが可能になります。AIの活用についてですが、看護師の記録や小型のセンサーや入院中の患者さんが着けているバイタルセンサーなどの情報から転倒や異常を起こすようなリスクを事前に予測する仕組みができてきています。今後はセンサーが小型化したり安価になったり高度化したりすることでたくさんの人が利用しやすくなり、学習が進むことで今までは予測できなかった事象も予測できるような可能性もあると思います。センサーが小型化すると患者さんの負担も少なくなります。将来的には装着しなくても、環境の情報から患者さんのリスクを推測できるようになる可能性もあります(アンビエントセンシング)。在宅で治療されている患者さんの一番の不安は症状が重症化しないか?ということと、症状が急変した時にどうしたらいいか?ということだと思います。そういったことを予測するAIも今後活用される可能性があると思います。
 
 
●スマイルリポート地域の医療スタッフ探訪
野邑瞳 さん(名古屋大学病院 地域連携・患者相談センター 医療ソーシャルワーカー)

特に力を入れていること
名古屋大学病院では認知症のある患者さんが安心して治療を受けられるように「認知症ケアサポートチーム」が活動しています。このチームは老人看護専門看護師、医師、薬剤師、理学療法士、医療ソーシャルワーカーなどの多職種で構成されております。チームで病棟回診やカンファレンスを行い、それぞれの専門的な立場から認知症の悪化を予防し、円滑に治療が受けられるように、患者さんやご家族、患者さんをケアするスタッフに対してアドバイスを行っています。医療ソーシャルワーカーは入院前の生活状況や利用されている介護保険のサービス内容を確認して、治療後にできるだけ速やかに住み慣れた元の生活に戻れるように支援します。また入院中にこれまでの生活環境を見直して退院後も患者さんとそのご家族が安心して暮らしていけることができるよう、社会福祉制度を活用して環境整備を行っています。

心に残るエピソード
認知症の患者さんについてのできごとが心に残っています。その患者さんは手術後に夜眠れなくなってしまい、点滴のチューブを引っ張ったりする行動を起こしていました。逆に昼間は眠ってしまい食事やリハビリができなくなるといった状態でした。認知症ケアサポートチームが介入し、薬の調整や病室の環境整備について提案をしました。ご家族に入院前の生活について詳しくお聞きすると、「新聞を毎日読む習慣があった」ということがわかりました。病棟のスタッフに伝えて、昼間はなるべく車椅子に座って新聞を読んでいただいたところ、徐々に生活リズムが戻り、夜はしっかり眠って昼はリハビリで歩く練習ができるようになりました。

今後の課題
認知症患者さんにとって入院という環境変化は非常に大きな混乱をもたらします。これまでの生活習慣や趣味など入院中でもできることを取り入れることは、その方の安心につながると思います。医療ソーシャルワーカーは退院後にどこでどのように暮らしていきたいか?という患者さんの思いを聞き、時には患者さんと患者さんのご家族との間に立って意思決定を支援していきます。また、認知症の患者さんとそのご家族が住み慣れた地域で生活していくためには介護サービスの利用が重要です。そこでケアマネージャーをはじめ地域の介護サービス提供者と連携して退院後も引き続き適切なケアを受けられるような橋渡しを行っています。
 
 

 
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