健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年9月12日

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●教えてドクター 
★9月のテーマ「AIと医療」

名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター
大山慎太郎 先生

医師は画像診断を日常的に行っていますが、疲れなどによる見落としや見間違いはどうしてもおこります。それに対してAIは疲れによって精度が落ちることなく、医師の診断の補助をしたり、医師が見つけられないような病変(病気になることによっておこる変化)を見つけたりすることができるのではないかという研究が多く行われています。具体的に実用化されているものとしては、2018年に名古屋大学がオリンパスと開発した「AI 内視鏡」があります。これはAIに内視鏡の画像から病変部の悪性度がどれくらい高いかどうかを判断させるというものです。タイムリーなものとしては、レントゲンやCT画像の中からコロナウイルス感染症の特徴的な病変を見つけるAIも作られています。海外のAI開発についてですが、例えばイギリスでは、糖尿病患者の症状である網膜症の早期発見のプログラム(DESP: Diabetic Eye Screening Programme)にはすでにAIによる自動の網膜画像解析システムが導入されています。AIの性能はかなり高いということをお話しましたが、ここに至ってもまだ診断の誤りはあります。ですので利用する医師がAIの限界や機能の特徴を理解したうえで使用し、最終的には医師の責任で診断を下さなければならないと考えています。
 
 
●スマイルリポート地域の医療スタッフ探訪
千草 眞値代 さん(名古屋市認知症相談支援センター 認知症アドバイザー 看護師)

特に力を入れていること
医療と福祉の連携の仕組みづくりに力を入れています。これまでに病院と連携して、本人ミーティング(認知症の本人が集い、本人同士が主になって、自らの体験や希望、必要としていることを語り合い、自分たちのこれからのよりよい暮らし、暮らしやすい地域のあり方を一緒に話し合う場)を開催してきました。その中で認知症本人でなければわからない不安や、今だから笑って話せることなど、多くの声を聴くことができました。現在はコロナ禍で本人ミーティングを継続することが困難な状況になっていますが、認知症の人が体験している世界や、抱えている心情に共感して欲しいとの思いで、これまでに得た認知症本人の声を元にリーフレットを作成し、市内の医療機関に配布させていただきました。また本人ミーティングだけでなく認知症本人との対談を動画配信するなど、様々な形で認知症の人の声を届ける取り組みを行っています。

心に残るエピソード
医療と福祉の連携の一つで、市内の医療機関に所属する認知症看護認定看護師と市内の認知症初期集中支援チームをつなぐ取り組みをしてきました。これまでに5名の認定看護師と5カ所の初期集中支援チームがマッチングし、認定看護師がオブザーバーとして、チーム員会議に参加することができました。そうした中で認定看護師から「地域で暮らす認知症の人の生活状況や病院とは違う支援の必要性を知ることができた」、「退院後の生活について地域との連携の必要性を実感した」、「病院内の認知症の人の退院カンファレンスに積極的に参加するようにしている」といった声を聞くことができました。また、「受診や入院にたどり着いていない認知症の人にこそ目を向け、介入することが必要だと気付かされた」という声を聞くこともできました。医療機関で働く認定看護師が、地域と関わることで認知症の早期発見、早期対応の必要性を実感してくれたことをとても嬉しく感じます。

今後の課題
私たちは「認知症になっても安心して暮らせるまちづくり」を目指しています。そのためには「安心して暮らせる」とはどういうことかを具体化しなければなりません。人それぞれ健康状態も違いますし、生活環境も違いますし、生きてきた過程も違いますし、考え方も違います。だからこそ認知症本人の声に耳を傾けることが大切だと思っています。そしてその声をまちに生活するすべての人々に、どのように発信していくかが今後の課題だと考えています。
 
 

 
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