健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年9月5日

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●教えてドクター 
★9月のテーマ「AIと医療」

名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター
大山慎太郎 先生

AIとはコンピューターがアルゴリズム(手順や計算方法)に従って判断して結論を出す技術のことです。AI と言う場合と機械学習と言う場合があります。アルゴリズムが複雑な場合AIと言うことが多く、簡単なものを機械学習と言うことが多いです。日常的に医師をはじめとした医療従事者は様々な判断を迫られながら働いています。この判断の部分を補佐するようなAIが一部で実用化されています。その中でも特に画像診断を補佐するAIがよく使われています。医師がレントゲンの写真を見て「骨折しています」とか「肺がんがありそうです。」といった診断をする時にAIがまず病気による小さい変化を見つけ出し示してくれるようなかたちです。その他には「臨床意思決定支援」と言われるものがあります。例えば医師が診断の際にAかBか迷った場合に支持してくれたり、検査の値がたくさんありすぎて判断に迷う場合にそれを補佐してくれたりします。また「治療選択支援」と言われるものがあります。患者さんがどういった治療をした時にどうなるか?どちらの治療を選ぶのが良いのか?といった選択(オーダーメイド医療、プレシジョン・メディシン)の際の支援をしてくれるAIもあります。AIに情報を学ばせる方法としてディープラーニングという方法が有名です。ディープラーニングは非常に精度の高い答えを返すことが可能になることで一躍有名になりました。その一方かなり膨大なデータを学習させなければならないという欠点もわかってきています。医療現場でAIを使うメリットですが、わかりやすい例では検診での活用があります。肺のレントゲンは大抵2名の医師で診断しています。これは見落としを防ぐために行っていますが、その際2名の医師は1日に何百枚という画像を見ていきます。その中で見落とす可能性もありえます。そういった場合に機械が先にレントゲン画像を見ることで、1名の医師の負担を減らすことができ、もしかしたら機械と1名の医師だけで、しかもより見落としが少ない診断ができるようになるかもしれないと考えられています。疲れることがないというのが機械の一番の長所だと思います。
 
 
●スマイルリポート地域の医療スタッフ探訪
佐光奈穂子 さん
(長久手市在宅医療・介護連携支援センター 保健師・看護師・介護支援専門員)

特に力を入れていること
長久手市の委託により東名古屋医師会が4年前に開設したセンターの運営に力を入れています。「やまびこ長久手」という愛称で覚えていただけると嬉しいです。そこで私は医療と介護の橋渡し役として、人と人とをつなぐ仕事をしています。例えば病院から退院して、この地域で療養生活をするという患者さんについての相談を受けて、訪問診療のドクターや訪問看護の看護師、ケアマネージャーといった、医療と介護のサービスについてのコーディネートをしています。その他、長久手市には医療・介護・福祉の連携を進めていく部会が3つありますが、そのうちの2つを「やまびこ長久手」が運営しています。入退院支援部会と多職種連携交流部会です。その部会の中で、最近では研修会やドクターを囲んだ交流会、もしバナゲーム(病気になる前のもしものための話し合いのきっかけをつくるカードゲーム)などを、コロナ禍のため、オンラインシステムZoomを使ってできるように企画しています。

心に残るエピソード
一緒に仕事をしてきた仲間のお父さんにある日突然、末期のがんが発覚したのですが高齢のため治療ができない状況でした。仕事仲間から「余命数カ月と言われたが、家には物が多くて介護ベッドなんて置けないし、とても家では看病できない。ホスピスがいいだろうか?」と相談を受けました。ところが、コロナ禍ですので病院も施設も面会ができません。「会えないままに最期の日を迎えるの?」という問いから、市内の訪問診療ドクター、訪問看護師、ケアマネージャー、福祉用具相談員でチームを組んで支援することになりました。そして在宅での体制を急ピッチで整えました。何よりがんばったのはご家族です。お父さんの体調の良い時は旅行に付き添いました。そして最後の最後まで自宅で家族と過ごされ、家族が見守る中でお亡くなりになりました。在宅療養というとハードルが高く感じられますが、様々な専門職が患者さんや家族と同じ方向を見て支援していくことによって、不可能だと思われることも可能にできると感じたエピソードでした。

今後の課題
大きな病院にかかっていたがんの患者さんが、余命数カ月となった時、その時点で患者さんのお住まいの地域で診てもらえるドクターを探すことがよくあります。患者さんにとっていよいよ体調が悪くなってから新たなドクターと信頼関係を築いていくというのは大きな負担だと思います。もっと早い時期からご自分の地域で信頼できるドクターを見つけて、ダブル主治医制のような形にして、病院と地域の連携の中で患者さんを支えていけたら良いのではないかと思います。それができれば訪問看護やケアマネージャーともっと早く連携がとれると考えています。「地域にもかかりつけ医を持ちましょう。」ということをお伝えしています。そしてニーズが高まれば訪問してくれるドクターも増えるのではないかと期待しています。
 
 

 
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