●教えてドクター |
名古屋大学医学部附属病院 地域医療教育学講座 准教授
岡崎研太郎 先生
糖尿病に関しては血糖値が高い状態である高血糖についての話題が多いですが、実は血糖値が低くなりすぎる低血糖についても注意が必要です。血糖値が下がりやすくなる原因として、糖尿病の薬が効きすぎたり、食事の量が少なすぎたり、いつも以上に運動したり、食事のタイミングが遅くなって食事と食事の間隔がいつもより長くなりすぎたり、といったことが挙げられます。このような原因により血糖値が下がり、低血糖になりますと、手足が震えたり、心臓が異常にどきどきしたり、冷や汗をかいたり、お腹が異常に減ったり、といった症状が現れます。低血糖になる心配がある方は、調剤薬局等で購入できるブドウ糖(粉状の物またはタブレット)を常に持ち歩いていただき、低血糖になってしまった場合、まずは10gブドウ糖を摂って下さい。あるいは砂糖でも良いので糖分を10g摂って下さい。糖尿病であっても薬を飲んでいない、あるいは注射をしていないという方は低血糖の心配はありません。糖尿病の薬を飲んでいらっしゃる方は低血糖について注意が必要であることを知っておいていただくと良いと思います。最初に現れる低血糖の症状は人によってそれぞれ違います。一度でも症状が現れた方は、「私は低血糖になるとこういった症状が現れるんだ」と覚えておいていただくと良いと思います。そして日頃から医師のアドバイスをよく聞いて準備をしておくことが大切です。糖分を摂る時に、ブドウ糖や砂糖はパサパサしていて水分が無いと飲みにくいですが、砂糖の入った缶コーヒーや糖分の入った炭酸飲料やオレンジジュースなどを一缶飲んでいただいても10g以上の糖分を摂ることができます。最近は飲み物から糖分を摂る方法以外にも、鼻から吸入するグルカゴン製剤という薬を処方してもらう方法もあります。程度の重い低血糖になった時に、ご家族などによって鼻からグルカゴン製剤を吸入してもらうことで血糖値を上げることができます。程度の重い低血糖になってしまい救急車を呼ぶ場合も、救急車が到着するまでの間に応急処置として使用することができます。かなり程度の重い低血糖になると意識を失ってしまうこともあります。意識を失ったうえに心臓に大きな問題が起こったり、意識を失って転んで骨折したりする恐れもあります。また、繰り返し低血糖を起こしていると認知症になりやすくなるということもわかっています。このような点からも、低血糖になることをできるだけ避けていただきたいと思います。