健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年8月22日

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●教えてドクター 
★8月のテーマ「糖尿病医療の最新情報」

名古屋大学医学部附属病院 地域医療教育学講座 准教授
岡崎研太郎 先生

糖尿病に関しては血糖値が高い状態である高血糖についての話題が多いですが、実は血糖値が低くなりすぎる低血糖についても注意が必要です。血糖値が下がりやすくなる原因として、糖尿病の薬が効きすぎたり、食事の量が少なすぎたり、いつも以上に運動したり、食事のタイミングが遅くなって食事と食事の間隔がいつもより長くなりすぎたり、といったことが挙げられます。このような原因により血糖値が下がり、低血糖になりますと、手足が震えたり、心臓が異常にどきどきしたり、冷や汗をかいたり、お腹が異常に減ったり、といった症状が現れます。低血糖になる心配がある方は、調剤薬局等で購入できるブドウ糖(粉状の物またはタブレット)を常に持ち歩いていただき、低血糖になってしまった場合、まずは10gブドウ糖を摂って下さい。あるいは砂糖でも良いので糖分を10g摂って下さい。糖尿病であっても薬を飲んでいない、あるいは注射をしていないという方は低血糖の心配はありません。糖尿病の薬を飲んでいらっしゃる方は低血糖について注意が必要であることを知っておいていただくと良いと思います。最初に現れる低血糖の症状は人によってそれぞれ違います。一度でも症状が現れた方は、「私は低血糖になるとこういった症状が現れるんだ」と覚えておいていただくと良いと思います。そして日頃から医師のアドバイスをよく聞いて準備をしておくことが大切です。糖分を摂る時に、ブドウ糖や砂糖はパサパサしていて水分が無いと飲みにくいですが、砂糖の入った缶コーヒーや糖分の入った炭酸飲料やオレンジジュースなどを一缶飲んでいただいても10g以上の糖分を摂ることができます。最近は飲み物から糖分を摂る方法以外にも、鼻から吸入するグルカゴン製剤という薬を処方してもらう方法もあります。程度の重い低血糖になった時に、ご家族などによって鼻からグルカゴン製剤を吸入してもらうことで血糖値を上げることができます。程度の重い低血糖になってしまい救急車を呼ぶ場合も、救急車が到着するまでの間に応急処置として使用することができます。かなり程度の重い低血糖になると意識を失ってしまうこともあります。意識を失ったうえに心臓に大きな問題が起こったり、意識を失って転んで骨折したりする恐れもあります。また、繰り返し低血糖を起こしていると認知症になりやすくなるということもわかっています。このような点からも、低血糖になることをできるだけ避けていただきたいと思います。
 
 
●スマイルリポート地域の医療スタッフ探訪
今井早紀 さん
(糖尿病・内分泌内科クリニックTOSAKI 臨床検査技師・糖尿病療養指導士)


特に力を入れていること
私は病院や診療所で30年以上看護の経験をしてまいりました。その間、患者さんの中にはご自分がどうしたいのかを十分医療者に伝えきれていない方が大勢いらっしゃいました。「私達医療者はこういった患者さんの困りごとに気付けていないんだな。」と自覚させられる場面が何度もありました。患者さんが専門的なことについて気軽に相談できたり、ケアを受けられたりしたら良いのではないか思っていました。現在では週に3日は医療機関で医師の診察の前の事前診察、週に1日は地域の方を対象にした糖尿病の看護活動、さらに週1日は足の変形や足の爪のトラブルや魚の目などの足に関するトラブルをかかえた地域住民の方へのフットケア事業を行っています。

心に残るエピソード
30代男性で糖尿病患者であるAさんから命を預けられる経験をしました。その方はとても面倒見の良い方で、仲間との付き合いの飲食が多く血糖のコントロールが難しい状況が長年続いていました。糖尿病の合併症が進行してきて30歳代後半で人生の最終段階を迎え、自宅療養と入院生活を繰り返されていました。当時私は、そのように様々な合併症が出てきたら、糖尿病内科や腎臓内科や眼科や形成外科などの専門医がいる医療機関で、より専門的でより高度な医療を受けるのが当然だと考えていました。ところがAさんはある夜、「僕は優秀な患者にはならない。それは自分の目指す人生じゃない。この病院の中で、中山さんができることだけをやってくれて看取ってくれたらそれでいい。僕の命は中山さんに預けると決めてるんだ。」と夜勤で巡回している際に私に話しかけてくれました。Aさんの主治医も「中山さんがそれでいいのならAさんの意見を尊重してあげたら。」と背中を押され、偶然私が勤務する時間帯に他界されたこともあり、Aさんを看取らせていただきました。Aさんには、「それぞれの患者さんが目指す医療や、それぞれの患者さんが目指す人生は、一人一人違うんだ。」ということに気付かせていただきました。患者さんに現場で育ててもらったこの看護の力を活かしていきたいと思います。私自身も歳を重ねるこの地域で、複数の病気やひざや腰の痛みなどをかかえながら生活している地域の住民のために、生涯現役で看護活動ができたらいいなと思っています。
 
 

 
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