健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年8月15日

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●教えてドクター 
★8月のテーマ「糖尿病医療の最新情報」

名古屋大学医学部附属病院 地域医療教育学講座 准教授
岡崎研太郎 先生

糖尿病の患者さんはよく合併症について心配されます。最初にお伝えしたいのは、糖尿病であっても血糖の調子が良ければ、(具体的にはヘモグロビンA1cという数値が7%までであれば)何年間糖尿病にかかっていようと、ほとんど合併症については心配しなくても良いと言われています。糖尿病になって血液の中の糖(ヘモグロビンA1c)の数値が高い状態が5年、10年、15年と続くと様々な合併症が出てくる可能性が高いと理解いただければ良いかと思います。小さな血管がダメージを受けた場合、神経に関する合併症が起こります。例えば、手のひらや足の裏がしびれてきたり、あるいは逆に感覚が鈍くなったりします。これは神経障害と言われます。また、目に障害があらわれる場合もあります。目の一番奥に、スクリーンにあたる網膜という場所があります。症状としては、まずこの網膜に小さな出血がおこり、進行すると視力が落ち、さらに進行するとほとんど視力が無くなってしまう場合もあります。その他にも、腎臓(体の中の水分やごみを尿として体の外に出してくれる臓器)が傷んでくることがあります。また、大きな血管がダメージを受けた場合の合併症ですが、足が膿んできて切断しなければならないといったこともあります。その他には脳梗塞や脳出血、あるいは心臓の血管が詰まって狭心症や心筋梗塞になる場合もあります。主治医の先生と相談しながら糖尿病の調子が良いか悪いかということを自覚しておいていただくことが重要です。例えば目については年に一度は眼科を受診し、瞳孔を開く目薬をさし、目の一番奥の網膜が見えやすい状態での検査を行うことが推奨されています。
 
●スマイルリポート地域の医療スタッフ探訪
今井早紀 さん
(糖尿病・内分泌内科クリニックTOSAKI 臨床検査技師・糖尿病療養指導士)


特に力を入れていること
当院では2017年よりFreeStyle(フリースタイル)リブレという最新の血糖測定器を導入しています。FreeStyleリブレは腕に500円玉ほどのセンサーを取り付け2週間継続して利用できる機械です。腕に針を刺して血糖を測る必要がなく、専用の機器をセンサーにピッとかざすだけで簡単に24時間の血糖値の変化を継続的に把握することができます。現在は1型糖尿病でも2型糖尿病でも特定の条件を満たしていれば保険が適用されます。保険が適用されない方でも今は薬局やインターネットを利用して自費で購入することで検査が可能となっています。FreeStyleリブレを取り付けた患者さんは、いつでも血糖値の変化を知ることができます。それにより食べ過ぎや間食が減ったり高血糖や低血糖が減ったりするのではないかと考えられています。「お菓子をどのくらい食べればどの程度血糖値が上がるのか?」ということや、「物を食べる順番で血糖値が上がるスピードが変わるのか?」とか「新しく飲み始めたお薬がどのように効いているのか?」といったことをご自身で体験していただくことができます。私たち医療スタッフは患者さんと一緒にFreeStyleリブレの結果を振り返りより良い治療を行ったり、生活のアドバイスをさせていただいたりしています。

心に残るエピソード
患者さんからは、「痛そうだし今体調は悪くないから注射は打ちたくない。」とか「食事はご自分でしっかり管理しています。」とか「やっぱり間食がなかなかやめられません。」など色々な声を聞きます。FreeStyleリブレを装着してご自身で血糖値の変化を理解された時に、患者さん自身から「やっぱりインスリン注射を打った方が良かったね。」とか「血糖値が上昇するのが良くなかったね。」とか「こっちのお菓子よりこっちのお菓子の方が血糖値は上がりにくかったよ。毎日お菓子を食べるのはやめました。」など積極的にお声をいただくことがあります。どれだけ私たちが最初に説明してもご理解いただけなかったことがFreeStyleリブレを使って説明することで患者さん自身がどのように行動すれば良いのかわかりやすくなるのだと思います。まさに「百聞は一見にしかずだ」と感じています。私たち医療者にとっても継続して血糖値の変化を把握できることは適切な治療や生活アドバイスのアプローチになり得ると考えております。ステイホームでの血糖管理をFreeStyleリブレで行うことは新型コロナウイルスを予防しつつ糖尿病を悪化させないことにつながると考えています。今後もこのような最新の技術を利用した治療によって患者さんの治療のお手伝いができればと思います。
 
 

 
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