●教えてドクター |
名古屋大学医学部附属病院 地域医療教育学講座 准教授
岡崎研太郎 先生
糖尿病にも様々な種類があります。例えば、ある日突然膵臓からインスリンというホルモンが出なくなってしまう1型の糖尿病があります。1型の糖尿病の方は生きていくためにインスリンの注射を打つか、インスリンをポンプという形で体に入れなければなりません。ただし今回は、糖尿病の中で患者数が多く、皆さんが「糖尿病」と聞いてイメージすると思われる2型の糖尿病についてお話をしていきたいと思います。2型の糖尿病は、血液の中の糖分の濃度が異常に高くなってしまうのが特徴です。糖分が高い血液が血管の中や臓器の中を回っているうちに、血管や内臓にダメージを与えてしまうのが一番の問題です。私達の身体は血糖値が下がりすぎる低血糖という状態にならないように設計されており、低血糖にならないために血糖値を上げるホルモンはたくさんあります。ところが血糖値を下げるホルモンはインスリンしかないと言われています。インスリンが不足した場合、または膵臓がインスリンを出していても、それ以上に体の外から入ってくる食べ物等が多すぎる場合、あるいは体を使う運動や活動の量が少ない場合、血糖値が上がりやすくなると言われています。また2型の糖尿病はほとんど自覚症状がないのが特徴です。東京大学の名誉教授に「バカの壁」というベストセラー本を書かれた養老孟司先生がいらっしゃいます。その養老先生が私の恩師との対談の中で、「糖尿病というのはバーチャルな病気だよね」とおっしゃっていました。まさにその言葉の通りで、血液の検査をして血液の中の糖の数字を測らなければ糖尿病かどうかということは判定できません。また、すでに糖尿病であっても糖尿病の調子が良くなっているのか、それとも上手くいっていないのかも血液の検査をしなければわかりません。問診や、聴診器を使っての診察だけでは、糖尿病の調子が良いかどうかということは容易にはわかりません。とにかく血液の検査が絶対に必要であるということが特徴です。糖尿病を見つけるためには日頃から自分の健康に高い関心を持ち、人間ドックや定期健診を受けることも重要です。自覚症状があって糖尿病が見つかる場合もあります。例えば、喉が異常に渇いたり、尿の回数が増えたり、特に何もしていないのに体重が増えたり、あるいは体重が減ったり、といったことから糖尿病が見つかることも珍しくありません。自分の健康に関心を持ちつつ、症状が現れた場合は医師に相談することが重要です。