健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年7月25日

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●教えてドクター 
★7月のテーマ「ワクチン接種の現状と課題」

名古屋大学医学部附属病院 中央感染制御部教授
八木哲也 先生

新型コロナワクチン接種はかなり加速して行われていて、1日100万接種という目標も実現されてきています。しかし以前から言われていますが、ワクチンの接種者(打ち手)が足りないのでは?という問題があります。またワクチン接種を済ませたという証明の管理を日本ではかなり厳密に行っていますので、ワクチン接種が進むにつれてそのような管理も大変ですし、その他の事務的な手続きも発生します。また余ったワクチンの無駄をどのようにして解消していくか?ということも問題になってくると思います。ワクチンの接種者(打ち手)についですが、アメリカやイギリスでは薬剤師の方も接種を行えるようになっています。イギリスではワクチン接種のスピードアップを図るためには、町の薬局でもワクチン接種をすることが必要になるであろうことを想定し、法律を改正し、準備をして対応しました。日本でもワクチン接種を行うことができる職種の範囲が徐々に広がってきています。医師だけでなく看護師や歯科医師や救急隊員もワクチン接種ができるようになりました。看護師については、潜在看護師(看護師免許を持っているが職場を離れている人)も動員しワクチン接種に協力しています。このように少しずつワクチン接種を行うことができる職種の裾野を広げ、なんとかワクチンの打ち手を確保しています。こうして、日本の全人口の半分程度の人がワクチン接種を2回済ませれば新型コロナウイルス感染拡大防止に大きな効果がでてくるのではないかと思います。さらに日本の全人口の6割、7割というように接種率を上げることが大事だと思います。新型コロナウイルスに感染した場合、その人に手軽に処方できる、インフルエンザで言えばタミフルのような内服薬が出てくれば、ようやく新型コロナウイルス感染症をコントロールできるようになるのではないかと思います。ただ、今の段階ではワクチンが最大の武器ですので、それを多くの方に接種していただくというのが一番の方策だと思います。
 
 
医療コラム ワクチンを打てない人も守る社会の力「集団免疫」
論説室 後藤 克幸

新型コロナのワクチン接種が広がって、免疫を持った人が人口の何%くらいまで広まれば感染は終息に向かうのでしょうか?「集団免疫」という言葉があります。社会の中で一定割合以上の人が免疫を持つようになると、感染患者が減少し始め、流行が終息に向かう状態になることを言います。感染症に対する「社会全体の抵抗力」と言うこともできます。

では、一定の割合の人というのはどれくらいの割合のことを言うのでしょうか?病原体の感染力の強さによってその割合は異なります。感染力が強い病原体ほど、集団免疫の状態になるために必要な免疫を持つ人の割合は、高い割合を必要とします。新型コロナウイルスの場合はどうでしょうか?新型コロナは、これまでのデータから、1人の患者さんから2人~3人に感染が広がる強さのウイルスだと言われています。仮に10人の集団があって、そのうちの1人がウイルスに感染し、そこから3人に患者が広がったとしましょう。その場合、集団の中で感染した人は10人中の4人となります。もし、残りの6人が免疫を持っていれば、感染はそれ以上広がらない状態になります。この10人の集団の場合、1人から3人に感染させる強さのウイルスに対しては、免疫を持った人が6人いれば、感染の拡大が食い止められる計算です。極端に単純化したモデルでの説明ですが、新型コロナウイルスの場合、人口の60%程度が免疫を持っていれば感染拡大を食い止めることができる「集団免疫」の状態になると考えられています。日本は今、2回のワクチン接種を終えた人が増えてきてはいますが、まだまだ60%には達していません。

しかし、今後、ワクチンを2回接種した人が多数派を占めるようになれば、社会全体が感染に対して強くなっていきます。結果的に、免疫を持っていない少数派の人も守られることにもなります。様々な理由でワクチンを接種できない人もいます。その人達を守るためには周りの家族や、周りの職場やコミュニティーの人達の中でワクチンを接種する人が増え、免疫を獲得した人が増えることが大切です。例えば風疹を例に考えてみましょう。妊婦さんの風疹への感染は産まれてくる赤ちゃんにリスクが伴うと言われています。そこで、妊婦さんの周りの家族や職場の人達が男性も含めて風疹のワクチンを接種し、妊婦さんを守りましょうというキャンペーンが行われます。

「集団免疫」は、社会を守るための縁の下の力持ちとも言われます。新型コロナワクチンの接種スピードを加速させることがとても重要だと思います。
 
 

 
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