健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年6月27日

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●教えてドクター 
★6月のテーマ「血栓症」

名古屋大学医学部附属病院 輸血部 教授
松下正 先生

新型コロナウイルス感染症は普通の肺炎を起こすだけではなく、肺にある様々な大きさの血管に血栓症を起こすことがあります。それにより肺炎がより重症化します。あるいは肺に関係のない場所である深部静脈血栓症や動脈の血栓症が、新型コロナウイルス感染症の治療中に起こり、それが原因でお亡くなりになる例が世界中から報告されています。新型コロナウイルス感染症にかかり重症の方の中には、集中治療室で人工呼吸管理が必要な方もいらっしゃいます。そういった方に対して人工呼吸管理だけをしていると、血栓症を起こして容態が悪くなってしまうということが報告されてきました。重症患者さんの管理においては必ず強力な抗血栓療法を注射で行うことが現在では常識となってきました。この1年間で、「新型コロナウイルス感染症の重症患者の管理には抗血栓療法が不可欠である。」という認識が、世界中の医療関係者の間に広まったので、新型コロナウイルス感染症の治療中に血栓症で亡くなる方の数は減ってきていると思います。しかし、まずは新型コロナウイルス感染症にかからないことが重要なポイントですので、感染症対策は厳重に行っていただきたいと思います。新型コロナウイルス感染症に対するワクチンは国民の大多数の方が注射しないと意味がありません。是非ワクチンは接種していただきたいと思います。
 
 
医療コラム ワクチン接種・海外の取り組みから学ぶこと
論説室 後藤 克幸

新型コロナウイルス感染症と戦う最強の武器はワクチンと言われています。しかし日本のワクチン接種率は海外と比較しますと、実はあまり進んでいません。日本と海外の対策にどんな違いがあるのでしょうか?

イギリスでは去年の11月にワクチン担当大臣をいち早く任命し、全国のワクチン普及の司令塔としました。日本の河野大臣がワクチン担当の大臣に任命されたのは、今年の1月のことでした。また、イギリスはサッカーが盛んですが、サッカー競技場などを会場に使っての大規模接種にも力を入れてきました。さらに、日本と大きく異なるのは地域の薬剤師さんたちがワクチン接種に協力している点です。イギリスでは去年の秋に法律を改正して、適切な訓練を受けたうえで薬剤師さんたちによるワクチン接種を可能としました。

アメリカは、バイデン政権に変わってから、トランプ政権時代には州政府任せでバラバラだった感染対策を、連邦政府が関与することを強力に推進するように、政策を転換しました。その結果、新規感染者数が急激に減少しました。アメリカも、イギリスと同じように、地域の薬局でワクチン接種ができる仕組みを作っています。アメリカでは従来から、インフルエンザのワクチン接種の際にも地域の薬局で接種を受けられる仕組みでしたから、これが今回の新型コロナウイルスのワクチン接種でも力を発揮したのでした。

こうした海外の対策から、日本でも学ぶべきことが多くありそうです。大規模接種会場を全国に増やしていくことは、今後のワクチン接種の加速に重要となるでしょう。そして、日本も、医師、看護師だけでワクチン接種を担うのではなく、イギリスやアメリカのように、幅広い医療専門職の人たちが協力できる仕組みにするべきです。厚生労働省は現在、「医師の働き方改革」というテーマで様々な専門家による審議会で議論を続けています。医師だけが抱え込んでいる忙しい仕事を、さまざまな医療専門職の役割分担によりタスクシェアし、チーム医療で医療業務を効率化しようという政策を推進しているところです。まさに、今、喫緊の課題になっているワクチン接種の加速のために、この政策を強力に進めていくチャンスといえるでしょう。
 
 

 
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