健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年6月6日

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●教えてドクター 
★6月のテーマ「血栓症」

名古屋大学医学部附属病院 輸血部 教授
松下正 先生

皆さんは血栓症というと血管の中で血液が固まってしまう病気というイメージをお持ちだと思います。血管には動脈と静脈があります。心臓から血液が送り出されて、体中の組織に栄養や酸素が送られるわけですが、その通り道が動脈で、酸素をたくさん含んだ真っ赤な血が流れています。体中の組織で酸素を使ったり栄養を使ったりした後、血液を心臓に戻さなければなりません。その心臓へ戻すための通り道が静脈です。どちらの血管に対しても血栓(血のかたまり)が発生して病気が起こることがあります。血栓が発生する場所によって症状に様々な違いがあります。例えば動脈で血栓が発生しますと、心筋梗塞や狭心症といった病気が起こります。その中でも心臓に酸素を運んだり、心臓に栄養を与えたりする心臓専用の血管(冠動脈)に血栓が発生しますと、心筋梗塞が起こります。他にも頭の血管で血栓が発生すると緊急を要する病気が起こります。ご自分の首を触ってみて下さい。血液がどくどくと脈打っている場所があると思います。そこは頸動脈と言いまして非常に重要な太い動脈です。この血管は脳の中に入っていきますと、どんどん細かく枝分かれして脳の様々な場所に酸素を運んだり栄養を運んだりします。この動脈では血栓ができる場所によって、脳梗塞を起こして命を失う場合もあります。静脈に血栓ができて起こる病気には、深部静脈血栓症があります。例えば足の静脈に血栓が発生すると、血液が心臓に戻っていきにくくなります。そうしますと血液が足の静脈に鬱滞して足が相対的に腫れてきます。問題はその静脈にできた血栓が静脈の中を移動して心臓に到達し、さらに心臓から肺の血管に移動し、そこで血栓症が発生する場合があるということです。そうしますと肺に酸素も血液もいかなくなるということです。その結果、胸が苦しくなったり胸が痛くなったり、場合によっては命に関わる発作が起こることもあります。
 
スマイルリポート 地域の医療スタッフ探訪
若林俊彦 先生(名古屋共立病院 集束超音波治療センター 顧問)

お仕事の内容について
皆さんは本態性振戦という病気をご存知でしょうか?はっきりした原因が分からないのに手が震える病気です。症状が悪化すると日常生活に支障をきたしたり、精神的苦痛となったりするケースも少なくありません。この本態性振戦という病気の治療法の一つとして集束超音波治療がありまして、これは保健適用されています。この治療は非侵襲的(生体を傷つけないような)治療で頭を切ることがなく治療は1回で終了し、治療中に効果が即時に確認できます。しかも放射線被曝が全く無く、体内への装置移植の必要が無いため感染症のリスクが無いのが特徴です。中部地区では名古屋共立病院が第1号の導入となりました。この治療法は2019年6月より本態性振戦に対して、さらに2020年9月より薬物抵抗性のパーキンソン病にも保険収載され新しい治療法として注目されています。本態性振戦は精神的な緊張が高まった時に増強することが多く、うまく字が書けない、箸が使えない、飲み物をこぼしてしまう、といった日常生活に支障をきたすような動作の障害や、声が震えるなどの症状により、人前に出るのが苦痛になるような精神的ダメージを生じやすくなります。この治療法は治療中に効果が確認できますので、治療直後に今まで悩んでいた震えが止まり、自分の名前をすらすらと書けるようになります。その時にはご本人はもちろん、治療を進めている我々医療従事者にも感動が湧き起こります。YouTubeから「偕行会チャンネル」で検索してみて下さい。最近はパーキンソン病にかかって薬物で止まらない震えに対しても、この治療が保険診療でできるようになりました。今後さらに癲癇(てんかん)やアルツハイマー認知症など脳の様々な難しい病気に対してもこの治療法が使える可能性が検討されています。
 

 
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