●教えてドクター |
名古屋大学医学部付属病院 神経内科 教授
勝野雅央 先生
現在、認知症については症状が出てきたときには、脳の変化がかなり進んでいるということがわかってきています。私たちはパーキンソン病やレビー小体型認知症という病気に対して、患者さんが病気に気付く前に診断し、予防的に治療ができないか?という研究のプロジェクトを今進めています。レビー小体型認知症には前触れ症状というものがあることが知られています。前触れ症状とは、夜間に大きな声を出したり、嗅覚が低下したり、便秘を起こしたりといった症状です。こういった症状の場合、それだけで患者さんが気づいて病院にいらっしゃるということは非常に少ないと思います。そこで私達は健康診断を受けておられる受診者の方々、特に脳の病気を自覚されていない方々に、「夜中に大きな声を出しませんか?」とか、「最近匂いがわからなくなっていませんか?」というようなアンケートをとって、前触れ症状をお持ちでないか?ということを調査してます。名古屋市のだいどうクリニック、岐阜県高山市の久美愛厚生病院、静岡県掛川市の中東遠総合医療センターなどの健診の施設と連携し、人間ドックの受診にいらっしゃった方々にアンケートをとっています。これまでに6,000人位の方にアンケートに答えていただき、その結果を分析致しました。健康診断を受診された、50歳以上の方にしぼってみたところ、7%の方で前触れ症状(睡眠時の異常、嗅覚の異常、便秘)が2つ、もしくは3つみられるということがわかりました。私たちはこの7%の方に再度お声がけをして、同意を得られた場合には画像の検査をさせていただいています。これは脳のドーパミン神経や心臓の交感神経を診る検査です。こういった検査をした結果、先ほど申し上げたアンケートで前触れ症状があった方の中で、1/3の方に異常があるということがわかりました。ですのでご本人には全く自覚症状が無く、そして私達が診察してもなお異常が見つからなくても、アンケートで異常がある場合は非常に高い確率で、レビー小体型認知症やパーキンソン病の進行が画像上では、すでに始まっていることを確認できることがわかりました。私たちはアンケートでも異常があり、かつ画像でも異常がある方に対して病気を予防するための臨床試験を今、行っています。こういったアプローチが今後脳神経内科の多くの領域で重要になってくるのではないかと考えています。