健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年4月25日

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●教えてドクター 
★4月のテーマ「認知症医療の最新情報」

名古屋大学医学部附属病院 老年内科
鈴木裕介 先生

前回お話した認知症に対する開発中の新薬ですが、かなり早い段階で使わないと効果が望めません。薬の効果を高めるためには認知症の早期発見ということが非常に有効な手段です。早期発見を可能にするためには主に二つの方法があります。一つは自分の知識も必要ですが、やはり周りの人に気づきです。政策的にも認知症の人や認知症の家族の人に優しい社会をめざしています。認知症というのは高齢になってくれば誰にでも起こりうる病気ですので、それに対して社会の意識を高める必要があります。例えば家族に認知症のきざしがある方がいたとしても隠したりせず、社会の中で症状や周りの人がどのように配慮したら良いかを共有し、認知症に対する抵抗の少ない社会にしていくことが大事だと思います。また、早期発見のもう一つの方法としてとして、早期に気付くための(私たちはバイオマーカーと呼びますが)生物学的な指標が必要です。その生物学的指標とは具体的に何かと言いますと、二つありまして一つは髄液の検査です。髄液というのは背中の部分に流れていて脳とつながっています。その髄液を抜いて検査しますと脳の中のアミロイドやタウタンパクの状態がわかり認知症の早期発見につながります。しかしそれは当然背中に針を刺すわけですから、一般の人には検診でこれを行うのは非現実的です。指標となるもう一つは画像検査です。放射性の核種を使い、アミロイドにその核種が集まるように注射を打って脳の写真を撮ると、アミロイドが脳の中で視覚として画像化できます。この検査については核種が高額であることと、核種を作るための大きな装置が必要ですので、通常の医療機関では扱っておりません。そのため、より簡便でより確実に将来の認知症の発症を予測できるような生物学的マーカーの開発が、現在研究においてとても注目されている領域です。一番理想的なのは例えば血糖値を測るように血液を抜き取り、それで脳の中の状況がわかるようになることですが、それはまだ確立されていません。今後根本的な治療薬の効果を高めるためには、早期発見のための生物学的なマーカーを確立することと、社会全体の気づきを早めることの二つに尽きると思います。認知症の人と家族の会の調査では、初めに周りの人が認知症の症状に気づいて医療機関にかかるまで10ヶ月ぐらいかかることがわかっています。認知症である本人が医療機関にかかることを嫌がったり、家族も本人に言い辛いこともあり、「まぁ歳のせいだろう」ということで済ませてしまったりすることが要因だと思われます。もう少し気軽に敷居を下げて、医療機関にまず相談をするということは大事だと思います。
 
医療コラム “コロナてんでんこ” 率先感染対策者たれ!
論説室 後藤 克幸

今年は東日本大震災から10年ということで先月は様々な教訓を伝えるニュースを目にしました。その中に、自分の身は自分で守る「津波てんでんこ」という言葉がありました。「てんでんこ」は「みんながそれぞれ自分で動く」という意味の東北の方言です。家族や友人のみんなが、今まさに自分を守る行動をとって逃げていることを信じて、まず率先して自分が高台へ向かって走る・・・逃げる・・・。いち早く、みんなが自分の身を自分で守る行動を確実にとれば、結果として地域全体の命が守られる・・・というわけです。

新型コロナウイルスと向き合っている今の社会でもこの教訓は、同じように生かされるべきではないでしょうか?ワクチンが普及するまでもう少し・・・それまでは、率先して自分の身は自分で守ることがとても重要です。まさに“コロナてんでんこ”率先感染対策者たれ!

心配されているのが変異ウイルスです。変異ウイルスによる感染者数は増加傾向にあります。国立感染症研究所によるとこの変異ウイルスは感染力が強いという特徴があり、今後の課題は、感染力が強い変異ウイルスによるクラスターを抑えることとされています。患者数が爆発的に増えると、重症になる患者も増え、医療体制を急速に圧迫することになります。

私たち個人がとる対策は、 変異ウイルスでも従来型のウイルスでも変わりません。手洗いと消毒を1日に何度も繰り返し、ウイルスを手からリセットして下さい。そして人と近い距離で話す時はマスクを着用し、密集した場所を避けて、多人数での会食は今は控えましょう。これは、まさに自分の身は自分でして守る「コロナてんでんこ」です。率先感染対策者たれ。周りの人たちの命も率先して守り、感染を広げない。まさに東日本大震災の教訓と同じです。
 
 

 
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