健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年4月11日

[この番組の画像一覧を見る]

●教えてドクター 
★4月のテーマ「認知症医療の最新情報」

名古屋大学医学部附属病院 老年内科
鈴木裕介 先生

ここ数十年で、認知症の研究は格段の進歩を遂げております。認知症の病態の本丸と言えるところまで迫っているような研究成果があります。それについてまず確認としてお話致します。「認知症」と診断された場合、おそらく半分から2/3位はアルツハイマー病が原因です。ですので、私が本日認知症についてお話しすることはアルツハイマー病を前提とさせていただきます。アルツハイマー病の発生原因として今のところ中心的な仮説としてはアミロイド仮説というものがあります。アミロイドというのは、脳内に溜まるタンパク質です。通常、健康な人でもアミロイドが脳の中に溜まります。それがアルツハイマー病の方においてはアミロイドベータというタンパクが重なり合い、それが脳から溶け出さないようになって、どんどん溜まっていってしまいます。それがおそらくアルツハイマー病の初期の変化で、それがだんだん溜まってくると次にタウタンパクという別のタンパクが神経の細胞の中に溜まり始めます。それが一定量溜まってくると結果的にそれが神経細胞を死滅させてしまいます。最初にアミロイドベータというタンパクが溜まり始めて、その後でタウタンパクが溜まり、最後にそれで神経の細胞が死んでどんどん神経が萎縮して小さくなってしまうのです。我々が患者さんを診ていて、物忘れがおきたり、今まで出来ていたことができなくなったりといった、生活において不便が出てくることで認知症の症状が現れます。ところが注目すべき点は、アミロイドベータというものが脳の中に溜まり始めるのは、そういう症状が確認できる約15年から25年位前からだということです。アミロイドベータが溜まり始めた時に本人と接しても全く異常は感じられません。普通の人と変わらないように会話もできるし生活の機能も保たれています。アルツハイマー病の最初の発生から症状が現れるまでの流れで、私たちが診ているのは最後の段階です。認知症に対する現状の情報として、日本では2000年に初めて認知症に対する薬が認可されました。それらの薬は物忘れの症状が現れてから、その進行を少しでも遅らせるための薬です。アミロイドベータが脳に溜まることが認知症の原因であるという仮説に基づけば、アミロイドベータが溜まらないようにし、次の段階としてタウタンパクが溜まらないようにするという先制攻撃が必要です。そういった薬ができないだろうか?ということがここ10年位考えられています。認知症の予防も薬によって行うことができる可能性が見えてきています。
 
スマイルリポート 地域の医療スタッフ探訪
尾之内 直美 さん(認知症の人と家族の会 愛知県支部 代表)

特に力を入れていること
「認知症の人と家族の会」においてコロナ禍で難しいことは、集合型の集いができないことや、入所されている方や入院されている方がご家族と面会ができないことです。そういった中で情報発信として「マンガで学ぼう認知症シリーズ」というものを作っております。その中で「施設の色々」というものを作りました。施設入所と言っても皆さんどのような施設があるのかわからず、「特養」や「老健」など聞いたことはあっても違いがわかりづらいと思います。ですので色々な施設の違いを一冊にまとめた漫画冊子を作りました。ご家族の方がこれを読むことにより、「大変な状況になってからでないと施設を利用できないと思っていたが、症状が軽い時から利用できるグループホームなどがあることがわかった。」といった気づきにもつながることもあり非常に好評です。介護保険で利用できるサービスにも多様なものがあるので、それが分かりやすく説明されていることはとても重要だと思います。そういった意味では、認知症のご家族だけでなくケアマネージャーさんや専門職の方や一般の方にもこの冊子を活用していただけると思います。

現場の課題
私どもは認知症カフェを火曜日から土曜日まで毎日開いております。皆さんに集っていただき、お話をしたり、ちょっとした勉強会を行ったりしております。また電話相談も毎日行っておりますので、ご相談があれば「認知症の人と家族の会」へお電話をいただければと思います。
 
 

 
関連記事

あなたにオススメ

番組最新情報