健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年3月28日

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●教えてドクター 
★3月のテーマ「新型コロナワクチンの最新情報」

名古屋大学医学部附属病院 中央感染制御部教授
八木哲也 先生

現在は医療従事者で先行接種が始まっています。各都道府県でいくつかの選ばれた医療機関にて接種が始まっています。高齢者の接種については政府が4月12日から始めると発表していますので、その時に間に合うようにワクチンが配布され、4月26日の週から本格的な接種が始まるだろうという見通しが立っています。現在各自治体では、どのような体制で皆さんに接種を行うかということが検討されていると思います。小学校などの体育館に多くの人が集まり集団接種を行うことも考えられています。あるいは、かかりつけの開業医さんで接種を行っていただくことも考えられます。または高齢者施設に入所されている方については、施設にいながらにして接種ができるようにと考えられています。それぞれの方々の状況によって接種の体制も変わってきますので、自治体からの案内を注意して聞いていただきたいと思います。例えば、在宅医療を受けておられるような方は、その在宅医療を提供して下さっているお医者さんなどに確認しサービスに基づいて接種を受けていただけると良いと思います。外国の例ですと、ワクチンを接種するバスのような車で地域に出向き、在宅医療を受けている人に家族と一緒に来てもらい、そこで接種を行ったりします。ワクチン接種に対してですが、ワクチンには副作用もありますが、それ以上には十分な効果があるということを知っておいていただきたいと思います。心配される副作用に対してもきちんとした対応の方法があります。副作用としてすぐに症状がでるアナフィラキシーであれば、接種した後30分程度その会場で注意して観察していれば、ほとんどの人がそこでは見つかりますので、そこで必要な対処が可能でしょう。接種をしてから1日後に起こってくるような発熱や頭痛などは軽度なものがほとんどです。これに対しては通常の解熱鎮痛薬などで対処が可能です。ですが、やはりその症状が長く続いたり、程度があまりにもひどかったりした場合は医療機関に相談していただくのが良いかと思います。心配な副作用それぞれに関して対応の仕方がしっかりとありますので、それをわきまえて接種に臨んでいただければと思います。
 
医療コラム 感染力が強力になった「変異ウイルス」
論説室 後藤 克幸

日本でも新型コロナワクチンの接種が始まる中、気になるのが変異ウイルスの存在です。コロナウイルスを電子顕微鏡で見ると丸いウイルスの表面に尖った突起物がいっぱい出ていて王様がかぶる王冠(コロナ)に似ていることからコロナウイルスという名がつきました。このトゲトゲはウイルスが体の中に入って増殖する時に重要な役割をするタンパク質です。私たちの体の免疫反応というのは、このトゲトゲタンパクを目印に攻撃する反応です。

ウイルスが体の中で免疫の攻撃を何回も受けていると、攻撃をかわすために目印のトゲトゲの形をちょっと変わった形に変えたものが突然変異で生まれてきます。世界で今までに確認されている主な変異ウイルスは、イギリスで去年の12月に見つかったもの、南アフリカで去年の12月に見つかったもの、そして今年1月にブラジルで見つかったものなど。ウイルスの表面のトゲトゲタンパク質を構成する成分のいくつかが変異していますが、すべてが入れ替わってしまったわけではありませんので、ワクチンが全く効かなくなることはない、というのが専門家の見解です。ただし、ワクチンの効果が低下してしまう恐れはあると言われています。

心配な点は、変異ウイルスの感染力が従来型ウイルスよりも1.5倍から1.7倍強くなっていることです。感染力が強いので、今後どんどん従来型ウイルスに代わって変異ウイルスが増えていくとみられています。国立感染症研究所によりますと、5月の半ばころには、日本の新規感染者の90%が変異ウイルスの患者になるだろう、と予測されています。

国内での拡大を食い止める対策として、変異ウイルスによるクラスターの発生を阻止することが重要です。変異ウイルスのクラスターがひとたび発生しますと、感染力が強いために、その地域で一気に患者が増えてしまいます。そうなると、重症になる患者さんも増えて、医療体制を急速に圧迫して負担をかけることになってしまいます。変異ウイルスの拡大に日本社会として対抗するためにも、ワクチンは、一日も早く、1人でも多くの人に接種を広げていくことが、今後の新型コロナ対策の重要な柱です。
 
 

 
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