●教えてドクター |
名古屋大学医学部附属病院 中央感染制御部教授
八木哲也 先生
今現在日本でも接種が始まっているファイザー社のワクチンについてお話したいと思います。このワクチンはおよそ5万人位の人をリクルートして、一方のグループの人にはワクチンを打ち、もう一方のグループの人には偽薬といわれるプラセボを打ちます。そして打ち終わった人について効果を見ます。ワクチンを打たなかったグループからは100人くらい感染者が出たとすると、ワクチンを打ったグループは感染者を5人程度に抑えることができました。つまりワクチンを打たなかった人がもしワクチンを打っていたら、発症を予防する効果が95%もあるという驚くべき効果があらわれました。我々が毎年打ってるインフルエンザのワクチンは、若い人で発症予防効果が60%くらいということですので、この新型コロナウイルス感染症に対するワクチンはそれを凌駕する有効性の高いワクチンだと思います。予防にも有効ですが重症化する人を少なく抑えられる効果もあります。このワクチンで注意すべきことは、特に今2回目の接種をした後に発熱や倦怠感や筋肉痛や頭痛などの全身性の副作用がある程度出るということです。一番我々が恐れる強い副作用の一つに「アナフィラキシー」というものがあります。これはアレルギー反応の中でも程度が強く、急速におこる反応です。このアナフィラキシーという副作用は当初10万回打つうちの 1回程度おこると言われていましたが、接種が進むにつれてその率が少し減り、20万回に1回程度だろうと言われています。では20万回に1回というのはどの程度のものかと言いますと、通常の他のワクチンに比べると5倍から10倍くらい確率が高い位です。私たちが検査をする際に使用する造影剤などのほうがワクチンを打つよりアレルギー反応が起こるリスクが高いです。つまりワクチン接種の方が他の処置を行うことに比べてアレルギーが起こるリスクは少ないです。アナフィラキシーなどのアレルギー反応が起こった場合でも、迅速にしっかりと対応すれば十分安全に対処できます。新型コロナウイルス感染症に対するワクチンは総じて言いますと非常に効果が大きいです。副作用もそれなりにはありますが、それ以上に余りある効果があるのではないかと思います。ウイルス接種は新型コロナウイルス感染症の発症を予防するというものですが、無症状の感染者は減らせるのかはわかっていません。しかし症状のある人だけでも減らすことができれば、他の人にうつす機会を減らすことになります。全体の患者さんの数が減れば、それだけ重症になり亡くなる方も減るわけです。やはり今は自分一人が打てば自分一人のメリットにもなりますが、他の多くの人のメリットにもなると思いますので是非接種を前向きに検討していただきたいと思っています。