健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年3月14日

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●教えてドクター 
★3月のテーマ「新型コロナワクチンの最新情報」

名古屋大学医学部附属病院 中央感染制御部教授
八木哲也 先生

新型コロナウイルス感染症に対して実用化されたワクチンの中には、メッセンジャーRNAという、ウイルスの遺伝物質を体の中に投与し、人間の体がそのウイルスの遺伝情報からウイルスのタンパク・抗原を作り出すことによってその抗原に対する免疫をつくるタイプのワクチンがあります。具体的に言いますと、今世界で使われているものには、ファイザー社とビオンテック社というところが共同開発をしたワクチンがあります。現在このワクチンは日本でも接種が始まっています。このワクチンは先ほど申し上げました、メッセンジャーRNAという遺伝情報を(壊れやすい遺伝情報を保護するため)脂肪の膜に包んで人に投与しています。その他には、アストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発したもので、遺伝情報をアデノウイルスと言われる、空のウイルスの中に入れてそれを投与します。アデノウイルスそのものは感染・増殖によって体の中で増えて病気を引き起こすことはありません。きちんと遺伝子情報を届けるために、アデノウイルスはベクターと呼ばれる乗り物のような役割を果たしています。またその他、モデルナという会社が開発したワクチンはファイザー社とビオンテック社が開発したものと同じようなタイプのメッセンジャーRNAのワクチンです。最近ではジョンソン&ジョンソンというアメリカの企業がワクチンを開発しました。これまでの紹介したワクチンは2回の接種が必要でしたが、1回の接種で済むワクチンを開発しています。また、他の種類のDNAワクチンなどの不活化ワクチンや従来の不活化を用いたワクチンが開発されてきています。日本ではどういったワクチンを接種するのか?ということは企業との契約にもよります。しかしながら世界中の多くの人にワクチン接種しないといけませんので、数多い種類のワクチンが必要になってきます。ですので、今後も新しいワクチンの開発が期待されると思います。国内でもDNAワクチンや不活化ワクチンなど、いくつかのワクチンの開発が進行中です。まもなく臨床的な治験(テスト)が始まろうとしているものもありますし、今すでに始まっているのもあります。今後そういった国産のワクチンも期待できるのではないかと思います。
 
スマイルリポート 地域の医療スタッフ探訪
錫村明生 先生 (偕行会城西病院 院長)

特に力を入れていること
私は認知症に対して力をいれています。認知症の鑑別診断をしっかり行い、治る認知症と治らない認知症を見極め、治る認知症をしっかり治療していきたいと思っています。アルツハイマー病のように進行する認知症もあるのですが、そういったものもできるだけ早期に見つけ、早期に治療しようと心がけています。そのため、私どもの病院では物忘れ外来や物忘れ検診なども行っています。そこでは血液検査やMRI検査で治る認知症を見つけています。今年の5月からはSPECT(スペクト)という脳血流を測定して認知症鑑別診断行う、非常に重要な機械が登場します。アルツハイマーというのはある程度までしか進行は止められないのですが、早期から治療を行っていると自宅で正常な生活を送ることができる期間が長くなります。早期に治療を始める必要があると思います。

心に残るエピソード
エピソードはたくさんあるのですが、最近特に気になっているのが、治る認知症の代表的なもので正常圧水頭症についてです。この病気はパーキンソン病のような歩行障害がでて、それから認知症が進みます。しかしこの病気は水頭症を治せば、完全に進行を止められますから是非見つけて早く治したいと思っています。できるだけ脳外科とチームを組みながら、こういった症例を少しでも治していきたいと思っています。

今後の課題
認知症の中で一番ご家族がお困りになる周辺症状と呼ばれる徘徊や精神症状などに対する治療薬がまだ少ないことが課題です。また、やはり初期の症状はある程度薬で抑えられるのですが、症状が進行した場合に完全に症状を抑える薬がないことは大きな課題であり悩みです。
 

 
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