●教えてドクター |
名古屋大学医学部附属病院 中央感染制御部教授
八木哲也 先生
新型コロナウイルス感染症に対して実用化されたワクチンの中には、メッセンジャーRNAという、ウイルスの遺伝物質を体の中に投与し、人間の体がそのウイルスの遺伝情報からウイルスのタンパク・抗原を作り出すことによってその抗原に対する免疫をつくるタイプのワクチンがあります。具体的に言いますと、今世界で使われているものには、ファイザー社とビオンテック社というところが共同開発をしたワクチンがあります。現在このワクチンは日本でも接種が始まっています。このワクチンは先ほど申し上げました、メッセンジャーRNAという遺伝情報を(壊れやすい遺伝情報を保護するため)脂肪の膜に包んで人に投与しています。その他には、アストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発したもので、遺伝情報をアデノウイルスと言われる、空のウイルスの中に入れてそれを投与します。アデノウイルスそのものは感染・増殖によって体の中で増えて病気を引き起こすことはありません。きちんと遺伝子情報を届けるために、アデノウイルスはベクターと呼ばれる乗り物のような役割を果たしています。またその他、モデルナという会社が開発したワクチンはファイザー社とビオンテック社が開発したものと同じようなタイプのメッセンジャーRNAのワクチンです。最近ではジョンソン&ジョンソンというアメリカの企業がワクチンを開発しました。これまでの紹介したワクチンは2回の接種が必要でしたが、1回の接種で済むワクチンを開発しています。また、他の種類のDNAワクチンなどの不活化ワクチンや従来の不活化を用いたワクチンが開発されてきています。日本ではどういったワクチンを接種するのか?ということは企業との契約にもよります。しかしながら世界中の多くの人にワクチン接種しないといけませんので、数多い種類のワクチンが必要になってきます。ですので、今後も新しいワクチンの開発が期待されると思います。国内でもDNAワクチンや不活化ワクチンなど、いくつかのワクチンの開発が進行中です。まもなく臨床的な治験(テスト)が始まろうとしているものもありますし、今すでに始まっているのもあります。今後そういった国産のワクチンも期待できるのではないかと思います。