健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年2月28日

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●教えてドクター 
★2月のテーマ「コロナ禍の高齢者の治療選択」

名古屋大学医学部付属病院 老年内科 教授
葛谷雅文 先生

新型コロナウイルス感染症については、携わった医療者や感染者の家族へ、社会から厳しい目が向けられるという問題も出てきています。最近は多少良くなったと思いますが一時期は新型コロナウイルスに感染した患者さんだけではなく、患者さんが受診した医療機関に対しても「感染の危険がある」ということで他の方々が受診に訪れないということがありました。また、「あそこのご家庭からコロナ感染者が出た」という理由でご家族も風評被害を受けたりしました。適切な治療をすればこのウイルスはなくなりますので、感染者がずっと感染源となることはありません。感染者への偏見を無くし、 感染者やそのご家族が悲しむことのないようにしていただきたいと思います。
最近ではどこのテレビ・ラジオ番組でも新型コロナウイルスの話で持ちきりです。そういった多くの情報の中で、是非正しい情報に対する認識をしっかり身に付けていただき、間違った認識に惑わされないようにしていただきたいと思います。現在、様々な学会からもたくさんの情報を発信しています。また、インターネットなどでも新型コロナウイルス感染症に関することを調べればたくさんの情報がでてきます。基本的に、厚生労働省やお近くの病院や行政のホームページには正しい情報が記載されていますので、そのような情報を積極的に活用していただきたいと思います。
ところで今月の話題の中に何度も、「最善の医療を受けるための話し合い」ということで「ACP」(アドバンスケアプラニング)という キーワードが出てきましたが、最後にあらためて申し上げます。「ACP」には色々な段階があると思います。まず一番初めに行っていただきたいのは、ご家族の中で機会をつくって話し合いをするということです。「自分の人生観はこうなんだ」とか「自分の最期に行って欲しい医療、行って欲しくない医療にはこういうものがあるんだ」など、それとなくご家族と話し合っていただきたいと思います。もちろん最初の話し合いには先生方は入っておらず、病状の複雑な内容についてはわからないと思いますので、漠然とした話していいと思います。そしてその次の段階で、かかりつけ医がおられるならば是非かかりつけ医を巻き込んで下さい。かかりつけ医に相談すれば、ほとんどの先生方は相談に乗って下さるはずです。「ご自分の今の病気の状況はどのようになっていて、今後どのように進展していくのか?」といったことも含めて考えないと自分の受けたい医療・ケアは決まらないと思います。ですので、先生も巻き込んで先生に自分の思いを伝えるという事も大事だと思います。そしてのACPは一回行ったら終わりではないです。自分の心づもりや自分の希望は少しずつ変わっていく可能性があるので、事あるごとに話し合いを続ければよいかと思います。それを行うことが非常に重要だと思います。
 
医療コラム 「ACP(アドバンス・ケア・プラニング)」普及へ今後の課題
論説室 後藤 克幸

今月の「教えてドクター」で葛谷雅文先生のお話に繰り返し登場したキーワードが「ACP(アドバンス・ケア・プラニング)」でした。厚生労働省が以前これを「人生会議」 という日本語に置き換えて、医療現場での取り組みとして広めようとしましたが、うまくいきませんでした。

アドバンス・ケア・プラニングの「アドバンス」は「前もって」という意味で、「ケア」は、医療や介護のことですよね。「プラニング」というのは計画を立てることを意味します。単なる「プラン」ではなくて「プランニング」という「ing」になっている点が重要です。アドバンス・ケア・プラニングは、1回で終わる「会議」ではなく、時間をかけて取り組む継続的な営みを表している、というのがこの言葉の本質だと私は思います。ACP(アドバンス・ケア・プラニング) は、「人生会議」という言葉では十分には本質を表していないのです。

この取り組みが外国から入ってきた概念のため、日本語にどのように訳すか、とても難しい課題です。「アドバンス・ケア・プラニング」の本質と医療現場で必要とされる重要さについて、理解を広めてもらうためのキャンペーンも必要でしょう。さらに、患者さんとご家族と医療チームが、相互の信頼関係を深めながら話し合いを継続するコミュニケーションのプロセスである「ACP(アドバンス・ケア・プラニング)」の実践を、医療現場で進めていくリーダーとなるスタッフをどのように育成するか?教育や研修の仕組みを作ることも今後の課題です。
 
 

 
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