健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年2月7日

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●教えてドクター 
★2月のテーマ「コロナ禍の高齢者の治療選択」

名古屋大学医学部付属病院 老年内科 教授
葛谷雅文 先生

コロナ禍でのお年寄りの治療選択についてのポイントですが、一番望ましいのは事前にご本人の希望する医療やケアが明確にされていることです。医療現場にとってもそれは貴重な情報になります。ご本人とご家族の意思は最も大切だと思いますが、さらにかかりつけ医や看護師など医療者も一緒に話し合いがされているのが理想的です。
ACP(アドバンスケアプラニング)や人生会議などという言葉で言われますが、どんな治療を受けたいか?どんな治療を受けたくないか?どのような人生観を持って生きているか?を話し合い、情報共有をしておくことはとても大切です。この事については厚生労働省も日本医師会も国民の皆さんに対して情報発信をしているのですが、なかなか広まっていないのが実情です。まだこういった考え方が十分に知られていないことと、人生の最終段階についてのテーマは言い出し辛いことが要因だと思われます。こういった話し合いを進めるためには話し合いをサポートするファシリテーターとなる人が必要ではないかと思います。
事前に自分の希望する医療・ケアについて情報共有する取り組みが重要であるということには理由があります。私は名古屋大学付属病院に勤務していますが、急性期で来院される患者さんも多いです。その際、ご本人は意思表示できないような状況で来院される方も多いです。そういった場合の医療方針・選択などの希望はご本人から聞き出すことができませんのでご家族に相談することになります。しかしご家族も急に尋ねられても、今まで医療や治療に関する希望や選択の話などしたことはなく、「どんな人生観を持っているか?」「どんな医療・ケアの希望を持っているのか?」といった情報はお持ちでない方がほとんどです。ご家族もとても悩まれますし、医療者サイドもなかなか決断できないので医療の提供が進まないというジレンマが起こります。またご存知のように昨今は新型コロナウイルスが流行している状況で、平時より急性期の患者さんが多くいらっしゃいます。そういった時にご本人の意思がよくわからないと、どのように医療やケアを進めるかの決断が進まないケースが多くなります。そこでやはりACP(アドバンスケアプラニング)をもっと推進した方がいいのではないかという話が出てきているのだと思います。
 
スマイルリポート 地域の医療スタッフ探訪
花井美紀 さん(ミーネット理事長)

特に力を入れていること
私たちはがんのピアサポート活動に取り組んでいます。聞き慣れない言葉かもしれませんが、ピアサポートの「ピア」というのは「仲間」とか「同じ立場」を意味しています。がんのピアサポートはがんを体験した人がその体験を生かして相談者であるがん患者さんやご家族の悩みや不安を同じ立場で受け止めながら、どうすれば良いのかを共に考える、言わばがん患者さんの身近な相談役となる取り組みです。がんのピアサポーターは1年間の養成講座で学んだのち、名古屋市がん相談・情報サロン「ピアネット」や愛知県がんセンターなど、県内20のがん診療に取り組んでいる病院や施設で相談・支援活動を実施しています。今は新型コロナウイルスの問題で非常に大きな影響を受けています。その中でどのように患者さんのご要望に応えていくかということに一生懸命心を砕いています。

心に残るエピソード
がんの患者さんは新型コロナウイルスに感染すると重症化するリスクが高いと言われています。私たちの活動はご相談をなさる方も相談を受ける側もがんの患者さんです。ですからどうしても慎重にならざるを得なかったのですが、名古屋市がん相談・情報サロン「ピアネット」にはご相談の電話が引きも切らずに鳴り続けました。私たちスタッフが対応したのですが、コロナの不安ががんの不安を増幅させているのだと痛感しました。

今後の抱負
現在、「話す機会がなくなり、余計に不安が高まる。」といった声をたくさん聞きます。コロナ対策として、社会全体にリモート化やオンライン化が進んでいますが、顔の見える安心というものを担保しながらコミュニケーションを図っていこうと思うとオンラインを活用するしかないと思います。がんの相談支援である「ピアサポート」もオンライン化の必要に迫られ、そのための準備に追われているところです。
 

 
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