健康ライブラリー

健康ライブラリー 2021年1月24日

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●教えてドクター 
★1月のテーマ「身近に直面する脊椎の痛み」

名大医学部 整形外科学 教授
今釜 史郎先生

腰痛とともに脚の痛みや痺れをお持ちの方はかなり多くいらっしゃいます。腰椎椎間板ヘルニアという病名をお聞きになった方もいらっしゃると思います。また中高齢の方に多くなってまいりますのが狭窄症です。狭窄症というのは年齢に伴って神経の入れ物である骨や靱帯が神経を圧迫してしまう状態です。「腰部脊柱管狭窄症」というのが正式な名称です。この症状をかなり多くの中高齢者の方がお持ちです。このような状態になりますと、腰から脚へのびる神経を圧迫して障害を起こしますので、腰だけではなく脚の方まで、全体的に痛みや痺れが起こってくることがあります。多くの方はお尻や太ももやふくらはぎなどの部分が全体的に痛いといった、いわゆる坐骨神経痛を引き起こします。今お話ししました、痛みや痺れだけであれば、われわれ医師はガイドラインに従ってお薬を処方して治療しますので手術をするまでの必要はありません。しかし足首が動かないとか力が全く入らないといったことになりますと、神経の障害としてはかなり強いものです。その場合は検査をしたうえで状況によっては手術をすることもあります。従いまして、そのような症状の時には早めに整形外科を受診されると良いと思います。手術は神経の圧迫を最も直接的に取ることができる方法です。最近は低侵襲脊椎手術もありまして、患者さんの状態によっては小さい傷で、神経を圧迫している骨や靭帯や椎間板といったものを取り除いて神経を楽にすることができます。ただし、これだけ医学が進歩しても多くの脊椎手術には全身麻酔が必要ですし、わずかですが手術によるリスクもあります。従いまして、今でも手術は最終的な選択肢となります。問題となるのはやはり頑固な痛みです。「ずっと痛みが続いていて治らないけれど病院に行くのは嫌だ。」と我慢していますと、風邪と同じくこじれて痛みが治りづらくなってしまうこともありますので、早めに病院に受診されることをお勧めします。
 
スマイルリポート 地域の医療スタッフ探訪
西村匡弘 さん
(名古屋大学大学院 医学系研究科 理学療法学講座 大学院生)

特に力を入れていること
リハビリテーション療法の可能性を探究してみたいと思い、現在は名古屋大学医学系研究科医学系研究科予防・リハビリテーション科学創成理学療法学内山靖研究室で歩行の時の姿勢の状態やその人以外から受ける力の相互作用などを主なトピックとして日々学習と研究を続けています。この分野では特に人の様々な動きに注目してより安全により安楽に生活できるようなアプローチを考えております。そのために必要となる科学的な根拠や理論の構築といったものがより重要になってくると考えております。加えて卓越大学院プログラム(CiBoG)の受講生として現在よく耳にするようなビッグデータの解析や機械学習などの最先端の方法を学習させていただくことにより情報化社会で先端的な研究をするための勉強も併せて行っています。これらを関連づけることにより、これまでに明らかにされている内容に加えて幅広くかつ深い考察ができるようになるのではないかと考えています。そのために専門としている医学の勉強はもちろんのこと、工学や情報学といった内容を扱うための勉強も続けていきたいと思っています。

心に残るエピソード
現在国家資格を取得しまして臨床現場で働き始めています。そうした中である脳卒中の患者さんを担当させていただいた時に、ある一言に衝撃を受けました。その一言は「歩くのってこんなに難しかったのかなあ。」という言葉でした。一見何気ない言葉に聞こえますが、「普段意識することなく歩くという動作をこなしていたのが、いざ病気を患うと歩く機能が障害されてしまい、今までの当たり前が失われてしまうんだな。」と改めて気づきました。現在ではそのような歩行の問題に対して、様々な医学的な知見が明らかになっていますが、依然としてこの当たり前の動作の全貌は明らかになっていません。まずそれを明らかにするために、まず歩くという動作に注目して様々なことを明らかにしていきたいと強く感じました。

今後の抱負
少し大きな問題につなげて申し上げますと、現在日本は超高齢社会の真っ只中にあります。その超高齢社会という環境を支えるための制度や人的資源や資金源がかなり逼迫した状況であることは皆さんご存知かと思います。一方で医療は多様化かつ専門化しつつありますので、様々なニーズに応えつつもリスク管理がより大切となってきているのが現状です。そうしますと一人一人に合わせた医療を提供したり、できるだけ病気にかからないようにしたりすることが大切になってきます。リハビリテーションの領域でも例外ではなく、いかに重症化させず、発症を減らすかということがポイントとなってきます。そのために私が専門としています理学療法の分野では日頃から一人一人の状態や動作を扱い、それらを客観的に把握できるような仕組みを作り、患者さんから地域にお住まいの方まで様々な層の方々に対して活用していきたいと考えています。そしてより健康により安全に生活できるよう支援することが社会全体の支援につながると考えています。
 
 

 
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