●教えてドクター |
中京クリニカル 院長
小森 拓 先生
予防医療として最近話題になりましたのが、血液一滴で13種類のがんを早期発見できるという検査についてのニュースです。これは国立がん研究センターを中心に9大学と6企業が参加してスタートした検査です。血液検査をするだけで、胃がんや乳がんなどの患者数の多いがんはもちろんのこと、希少ながんを含む13種類のがんをごく初期の段階で診断できるという検査です。この検査は血液の中を流れるマイクロRNAとよばれる核酸を調べることによって行われます。がん細胞というのはこのマイクロRNAを放出しますので、これを正確に測定することによって、どんながん細胞が潜んでいるか突き止めるというわけです。3年後の実用化を目指して、現在急ピッチで研究が進められています。女性の乳がん検査については、日立製作所が新しく開発したマルチモード超音波CTという検査があります。この検査では水に浸した乳房に超音波を当てることによって、痛みを伴わず1分で乳がん検査ができます。圧迫感もなく正確性も増し、腫瘍が良性か悪性かの診断も可能になってきます。このマルチモード超音波CTでの検査は間もなく実用化の発表があるのではないかと思われます。これは乳がん検診に大きな革新をもたらすのではないかと言われています。その他の検査としては尿一滴でできるがん検査があります。これによって「がんは心配だけれど色々な検査を受けるのは大変そうだ。」と考える方が非常に安価で苦痛のない検査を受けることが可能です。線虫は嗅覚が非常に発達していてがん細胞に集まってきますので、それを利用した検査です。この検査も普及してくると思われます。またその他に腸内フローラ(腸内細菌叢)というものもがん検査において注目されています。腸の中には数百種類、100兆個以上もの細菌が住んでいます。よく善玉菌、悪玉菌、日和見菌などと言われますが、そういった大まかな分類のみならず、各菌の個性ががんや生活習慣病、抑うつ状態、認知症、リウマチ、アレルギー、肝臓の状態など多くのことがらに関連することがわかってきました。そこで腸内の細菌を調べることによって体質改善に役立つと言われています。例えば新型コロナ肺炎についても腸内フローラと重症度の関わりがあると言われていて多くの研究者が現在分析中です。