●教えてドクター |
中京クリニカル 院長
小森 拓 先生
健康診断の目的は今の体の健康状態を明らかにして、異常があればそれを発見し、健康な生活を送るための健康維持や改善をはかることです。たまに「体調が悪いので検査で悪い結果が出たらどうしよう。」などと心配なさる方がいらっしゃいますが、この考え方は本来の健康診断の意味から外れています。調子が悪いという自覚症状がありましたら、健康診断ではなく病院で受診することが必要です。「けんしん」には健康の健をあてる健診と検査の検をあてる検診の2種類あります。発音は同じですが、前者の健診は健康であることを確認するためのものでメタボ健診などがこれに当たります。一方で検査の検をあてる検診は、特定の病気にかかっていないかを調べ、早く治療を行うことを目的とした検査と言えます。がん検診や骨粗しょう症検診や肝炎ウイルス検診などがこちらの検診に分類されます。健診は様々な病気の可能性を踏まえたうえで全身を調べることにより、早期発見・早期治療につなげるために行われています。人間ドックの「ドック」はもともと船の修理や点検を実施する場所のことを表していました。船の状態をくまなくチェックして異常が無いことを確認することになぞらえて、全身の検査をすることをドックと称するようになっています。やはり長生きできたとしてもベッドに寝たきりでは人生を謳歌しているとは言えません。健康寿命という言葉が最近注目されているように、年齢を重ねても若々しく健康に過ごせることが大切だと考える方が増えています。そのためには病気になる前に病気のリスクを発見して予防することが大事です。「元気だった人がある日突然倒れた。」ということを耳にすることが時々あるように、一見元気そうな方にも隠れた病気が潜んでいることがあります。医療には予防医学や治療医学がありますが、予防医学がとても注目されています。糖尿病や高血圧や脂質異常等の生活習慣病はかなり進行しないと自覚症状が出てきませんし、がんも何年もかかってゆっくり進行するケースが多いので、早く病気を見つけてその芽を摘み取れば治癒させることも可能です。年齢とともに病気が出やすくなってきて、発がんリスクも高まります。特にがんについては早期に見つかれば治療の費用も期間も少なくて済みます。50歳以上の方や喫煙者やがんにかかったご家族がいらっしゃる方や生活が乱れている方は是非人間ドックを受けていただきたいと思います。人間ドックを受けていただくことが病気の早期発見・早期治療につながると考えております。