●教えてドクター |
愛知医科大学 名誉教授 / 伏見・長東伝クリニック 院長
小林章雄 先生
メンタル疾患の治療は基本的には精神科の先生にお願いすることになりますが、最近では精神科の先生だけでなく、内科や心療内科等の先生もメンタル不調の治療に携わることが多くなってきました。いずれにせよメンタル面の不調が続く場合は大それたことを考えずに気軽に医師に相談されると良いと思います。昔は先生によって流儀が大きく異なる場合が多く、自分に治療方針が合うかどうかが心配で受診をためらわれる方もいらっしゃったと思います。しかし現在は主な精神疾患については学会から標準的な指導ガイドラインがでていまして、それを基に専門医の先生や一般の先生方も治療を行っています。ですので治療内容が大きく異なることはありません。メンタル不調が続く場合はあまり悩まずに受診していただいた方が良いと思います。メンタル不調に対する薬物療法について、治療ガイドラインでは、「必要十分量を必要な期間だけ与える。」ということが基本になっています。不十分な薬物の量で治療を行っていると治りが悪いので、ご自分に副作用や不調が出てきた場合には主治医とよく相談することが必要です。不調がでてきたのですぐ病院を変わるということを行っていると、いつまでも最適な治療に結び付きません。薬物療法以外でよく行われているものには、リワークやカウンセリングの中で行われる認知行動療法があります。認知行動療法というのは、メンタル面の調子が悪くなると、世の中のとらえ方や対人関係のとらえ方に極端なゆがみがでてきて、そのゆがみのために増々落ち込んでしまうので、そのゆがみを合理的なものに変えていき気分が良くするという標準的なアプローチです。その他にマインドフルネスとよばれるものが精神科の治療に取り入れられるようになりました。一般的なマインドフルネスの方法は自分の呼吸に注意を集中して、息を吸った時にお腹がどのように膨らんでいるか?などに注意を向けながら自分の中に浮かんでくる思いを否定せずに好奇心を持って受け止めるといったものです。それを続けることによって次第に元気になるという考え方です。客観的に自分を見つめるという意味合いがあり、苦しい時に苦しいと思うだけでなく、「今自分は苦しがっているな。」と客観的に考えると苦しさが軽減されるという効果があります。