●教えてドクター |
愛知医科大学 名誉教授 / 伏見・長東伝クリニック 院長
小林章雄 先生
メンタル面の不調を訴える患者さんの中では、気分がふさいで何もしたくないというのはよくある症状です。また言いようのない不安を感じるだとか、集中力が無くなって仕事が手につかないとか、人の言っていることが頭に入らないといった症状を訴えられる方も多いです。仕事をしている方の中には、「自分は能力が無いのではないか?」「だめだ、だめだ、何をしても失敗する。」というように思うようになり退職届けまで書いてしまうような方もいらっしゃいます。あるいは通勤途上で「このまま消えてしまった方がいいかな。」というようなことを考える方もいらっしゃいます。さらにメンタル面ではなく体の方に不調が出る場合もあります。例えば、頭が痛い、頭が重い、めまいがする、ふらつく、耳鳴りがする、胸が苦しい、といったような身体的な症状として現れることがあります。メンタル不調として一番多くわかりやすいサインとして、睡眠の問題があります。ある調査によるとうつ病の人の85%位が不眠の症状があることがわかっています。不眠の中にも3つのパターンがあります。1つ目は入眠障害と言われ、寝付けないという状態です。2つ目は中途覚醒と言われ、夜中にはっと目が覚めてひどい時には、1、2時間おきに目が覚めてしまう状態です。3つ目は早朝覚醒と言われ、朝早く目が覚めてそこから眠れなくなってしまう状態です。寝付けないということは不安等がきっかけになることが多いです。夜中に目が覚めてしまう中途覚醒はうつ病の症状として多いように思われます。寝付けないという状態は皆さん困るので、受診されるきっかけとなることが多いです。しかし、夜途中で目が覚めたり、朝早く起きてしまったりということは、中高年の方は特に年のせいだと思いがちです。ただそういった症状の方の中に「睡眠時無呼吸症候群」という別の病気が背景にあることがよくあります。「睡眠時無呼吸症候群」というのは夜中に息が止まり、その都度目が覚めるという病態でです。それを見極めるためには睡眠のパターンやいびき等を回りの人に確認してもらったり、睡眠アプリで確認したりしていただきたいです。そして必要に応じて睡眠科という睡眠を専門に扱う科がありますので、そちらを受診していただきたいと思います。