健康ライブラリー

健康ライブラリー 2020年10月4日

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●教えてドクター 
★10月のテーマ「With コロナ時代の健康と運動」

名古屋大学 総合保健体育科学センター 教授
小池 晃彦 先生

運動と健康の関係はとても大切です。運動には体の調子を整えるコンディショニングというものからフィットネスといって体をさらに望ましい状態にもっていくものがあります。 フィットネスには心臓や肺の機能を高めるものと筋肉の機能を高めるものがあります。運動することで体が運動に適応して、遺伝子から変わり体の細胞を働かせる酵素も変わっていき、体がどんどん望ましい状態に変わっていくという仕組みです。フィットネスというとだんだん運動の量が増えていって身体機能を高めるということになるのですが、先ほど申し上げたコンディショニングは体の調子を整えるものになります。新型コロナウイルスが流行している状況で体を使わなくなると、筋肉が細くなってしまったり、バランスの機能をくずしたり体が硬くなってしまったり、様々なコンディションが崩れてしまうことがありますが、日頃から運動を少しずつしているとそのようなことを予防できます。運動を繰り返すことで体がどんどん変わっていき、それにより体の老化や病気の原因となる根本のメカニズムが改善されるということがわかっています。
運動というと少し前までは体の脂肪を減らすダイエットに対してよく言われていましたが、最近は高齢者に対する運動として注目され、脂肪を減らすだけでなく筋肉を増やす役割が期待されています。さらに運動により体を細胞から変えてしまうので様々な病気に効果が期待されます。例えば脳自体を変えてしまうことにより認知症や鬱を予防したり、骨粗しょう症に対して骨を強くしたり、便秘を改善したり、様々な効果が期待されています。そういったことから運動薬のように運動が医療になると最近は言われています。
 
スマイルリポート 地域の医療スタッフ探訪
牧 香代子 さん
(医療法人秀麗会 山尾病院 看護師、栄養サポートチーム)

特に力を入れていること
私は数年前までホスピスというところで働いていましたが、そこで「生きたい」と強く思っている患者さんの思いにふれて、栄養について学び取り組むようになりました。今は地方の病院で栄養サポートチームのメンバーとして、地域では一般社団法人WAVES Japanのメンバーとして栄養の問題に取り組んでいます。入院中の栄養サポートは専門職のチームで行うことができます。ただ病気によってはサポートしても難しい場合もたくさんありますし、病気になって状態が悪くなる方や治りが悪い方の特徴もなんとなくわかってきました。それは入院時にすでに低栄養という問題をおこしているということです。ですので地域で暮らしているような入院前の段階で低栄養をなんとかしたいという思いがありWAVES Japanの活動を行っています。WAVESというのは「私たちはまさに社会の教育者であれ」というWe Are Very Educators for Societyの略です。栄養を専門とする医療・介護に携わっている専門家がボランティアで、最新の知識や臨床で培った知見をもとに、健康な方の栄養状態を維持し、今以上に良くするために、高齢者の地域や福祉や医療の基盤の確立のために、啓発活動や市民の栄養教育プログラムを提供しています。

心に残るエピソード
70代の女性の患者さんが心に残っています。がんで腸がつまってしまい腸閉塞の状態で、痛みが強く医療用麻薬で痛みをコントロールしていました。それなのに、毎日のようにご家族と一緒に食事をとられていました。そして食べれば吐いてしまうといった、苦しまれている姿がずっと見受けられました。「なぜ、そんな状態なのに食べるのですか?」と聞いたことがあります。その時の患者さんからのお答えは、「自分は死んでいくことはわかっているんだけど、命がある限り頑張って生きたいんだよ。食べるということは生きるということだから、自分は頑張って生き抜く姿を子どもや孫たちに見せたいんだよ。」という命の授業でした。私はこの言葉を聞いて、最期までその人らしく生き抜く患者さんを支える、「栄養」という部分をしっかりサポートしたいと思い、この仕事についています。

今後の課題
新型コロナウイルス感染症の影響などで、みなさん運動量が減ってしまいましたし、ソーシャルディスタンスを保たなければならないため、みんなで楽しんで食事をするという機会も少なくなりました。そのため運動機能だけでなく、食べる機能や消化する機能、認知機能が衰え、精神活動や社会活動なども低下してしまうリスクが高いと思います。みなさんには特に良質のたんぱく質や脂質をたくさん含んだバランスの良い食事をとっていただき、無理のない程度に運動を行って欲しいと思います。そしてみなさんにいきいきと生きて欲しいと思っています。
 
 

 
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