健康ライブラリー

健康ライブラリー 2020年8月30日

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●教えてドクター 
★8月のテーマ「新型コロナ感染症の現状と今後の課題」

名古屋大学医学部附属病院 中央感染制御部 教授
八木哲也 先生

<新型コロナウィルスと向き合う生活の注意点>
新型コロナウイルス感染症は多くの方がまだ未感染である新しい感染症ですので、一人一人が感染対策に注意して日常生活を送ることが大切です。無症状でも他人に感染させることがあるため、人から人への感染を完璧に予防することが非常に難しい感染症です。私たちが日常生活でできる対策はソーシャルディスタンスを保つ(人との距離をとる)等、3密と呼ばれる状態を避けることです。そういった中でマスクという防護手段があります。お互いがマスクをしていれば、ある程度距離を縮めて話し合いをすることがあっても、飛沫をマスクがブロックしてくれますので感染予防につながります。また、ウイルスは3日位感染力を保持して生存しているのではないかと言われています。不特定多数の方が触った物を触らざるを得ない場合もあり、そうした物を触った手で我々は無意識のうちに髪の毛や鼻や口の周りを触ったりしています。病原体の付着した手でそのようなことを行うと感染につながることになります。特に目の粘膜は感染ルートになりやすく、目の粘膜に付いたウイルスが喉に通じるということもあります。そのため我々の病院での感染対策としてゴーグルやフェイルシールドを使っています。手から他の部分にうつさないようにするためには、日常的に手洗いをきちんと行うことが大切です。新型コロナウイルス感染症はどの人にも感染しうる感染症です。大部分の人は軽症ですが「軽症だからいいや」と考えますと、病気が重くなって命を落とすリスクがある方にも感染させてしまう可能性があります。そういったことを予防するためには一人一人が感染しないようにし、全体としての感染者数を少なくする取り組みが必要となってきます。私も含めてすべての方々が、「マスクを着ける」、「ソーシャルディスタンスを保つ」、「手洗いをする」といった基本的な感染対策に注意して生活することがしばらく必要であると思います。
 
医療コラム 医療現場からの“気になる声”
論説室 後藤 克幸

新型コロナウイルス感染症の拡大で緊急事態宣言が発出された4月以降、感染を恐れて病院の外来を受診する患者さんが減少しています。医療コンサルタント会社が、医療機関の診療データを分析した調査によりますと、去年の4月と今年の4月のデータを比較すると、ほとんどすべての病院で、外来患者数が減少していました。中には、減少率が約40%にも及んだ病院もあったそうです。

本来受けるべき検査や治療、薬の処方が、先延ばしにされる例が増えていることは、とても気がかりです。糖尿病などの生活習慣病専門医で作るグループは、生活習慣病の患者300人以上を対象に、緊急調査を行いました。その結果、およそ20%の患者が「新型コロナの流行が始まってからは病院への通院は控えている。」と回答。その理由を尋ねると、80%が「新型コロナに感染したくないため」と答えたということです。さらに「緊急事態宣言が解除された後は、通院をどうしているか?」と質問しますと、「まだ、通院や薬局でのウイルス感染が不安」と回答したそうです。

生活習慣病の療養では、定期的な通院と医師の指導、薬の処方のもとで、必要な生活習慣の自己管理を継続することが重要です。このため、生活習慣病の専門医は「血糖値や血圧、食生活や運動習慣など、これまで上手にコントロールしてきた患者さんが、新型コロナが怖くて必要な検査や治療から遠ざかってしまうと、健康を害してしまうリスクが高まるのが心配」と警告しています。人間ドックや定期検診についても、がんなどの早期発見が遅れてしまう恐れがあります。

ウィズ・コロナ時代の新しい医療の在り方として、オンライン診療やオンライン服薬指導など、新しい取り組みも医療現場で始まっています。ぜひ、かかりつけの先生のアドバイスを得て、生活習慣病に向き合っていらっしゃる皆さんは、適切な治療をしっかり継続していただきたいと思います。

 
 

 
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