健康ライブラリー

健康ライブラリー 2020年5月24日

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●教えてドクター 
★5月のテーマ「健康寿命」

名古屋大学医学部 老年科学講座 教授
葛谷雅文 先生

健康寿命を延ばすためには、栄養を摂るだけでなく運動することも大切です。運動には色々な種類がありますが、有名なものとして有酸素運動やレジスタンス運動等があります。筋肉を鍛えるには、有酸素運動よりもレジスタンス運動の方が良いと言われています。レジスタンス運動の手始めに行うものとして、まず椅子に座り、椅子から立ち上がるということを繰り返す運動があります。その運動によって足の筋肉を使うことになります。またその他有名な運動として、スクワットという運動があります。半分かがむような感じで行いますが、膝の位置をあまりにも前の方にすると、膝を壊すことがあるようです。少しお尻を後ろに出すような感じでのスクワットが良いと言われています。ただし日頃あまり運動していない人が急にスクワットを行うと、転んだりする場合があるので危険です。しっかりと支える物(机等)を用意して行った方が良いと思います。寝る前にできる運動もあります。例えば、ベッドを使用している方はベッドに座ったり、そこから立ったりという運動ができます。お布団を使用している方も、お布団に座ってそこから立ち上がるという運動で、かなり筋肉を使うので体を鍛えるには良いと思います。有酸素運動もやり方によっては、かなり筋肉を使うことになります。例えば歩幅を広げて歩行するだけでも、かなり足の筋肉を使うことになります。日頃有酸素運動を行う時も少し工夫することによって、レジスタンス運動の代用とすることができます。有酸素運動とレジスタンス運動をうまく組み合わせて行えるととても良いと思います。
 
スマイルリポート 地域の医療スタッフ探訪
内山 靖 先生(名古屋大学 大学院 医学系研究科 理学療法学 教授)

特に力を入れていること
リハビリテーションというのは、その人らしく社会に参加して安全と尊厳を保つために様々な活動を維持・改善していくための支援をするものです。そのような中で高齢者にとっては虚弱性の予防と対応ということが非常に重要になります。予防には病気にかかりにくくする、あるいはかかった病気を重症化させない、また同じ病気に再びかかる再発を予防する、というようなことが含まれます。認知機能が低下するのを予防するということも大切です。医療の中でのリハビリテーションの役割を考えますと、急性期病院という所で入院できる期間は限られていますので、早くベッドから起きるということを促すことが大切で、電気的な刺激による筋力の回復ややロボットを活用した理学療法、呼吸の介助などがおこなわれることもあります。また、退院後の在宅生活への継続的な支援も重要です。

教育面で力を入れている事
理学療法学の教育面で力を入れていることは、利用者や対象者の方の身体的機能を医学的にとらえることはもちろんのこと、人として心理的・社会的な面からも総合的にとらえる感性と能力を身につけてもらうことです。そのためには、「人の話をよく聴く。」「わかりやすく説明できる。」というようなコミュニケーション能力が非常に重要になります。最近の医療では一つの職種だけでなく、大勢の専門職やご家族とで関わりあう、チーム医療というものが推進されています。その中で皆さんと価値を共有できるような柔軟な考え方も育成できればと思っております。それに関連して、高い倫理観を養うのはもちろんのこと、エビデンスと呼ばれる科学的根拠の理解と集積を促すことも大切です。また、新たな科学技術として、再生医療、ロボティクス、デジタル・データヘルス等があります。これらの事を融合した上で温かな眼差しで人に接することができる専門職の育成を目標としています。

今後の課題 
世の中で少子高齢化が進行する中、また国民の働き方が変わっていく中、広く医療に携わる人々はさらに増えていくと考えられています。その中で、理学療法・リハビリテーションはさらなる大きな役割を期待されていると思います。がん患者さんの両立支援、すなわち病気の治療をしながら働く、といった事に関する役割はとても大きいと思います。メンタルヘルスの変調や定年の延長に伴う就労に必要な体力や心身機能等に対しても理学療法の働きかけは有効だと思っています。また再発が多いと言われている脳卒中や心筋梗塞に対する継続した支援も大切です。腰痛や関節の痛み等の慢性痛に対しても今後の理学療法の需要はさらに高まると思われます。現在は、新型コロナウイルス(COVID-19)に関連して、生活や活動に様々な制約がある中、高齢者の方々は体力や考える力等を発揮する機会が少なくなっているのではないかと危惧しているところです。
 
 

 
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