健康ライブラリー

健康ライブラリー 2020年5月31日

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●教えてドクター 
★5月のテーマ「健康寿命」

名古屋大学医学部 老年科学講座 教授
葛谷雅文 先生

健康寿命の延伸のためには社会的なつながりを持つということがとても大切です。家にいるばかりで誰とも話さないような状況は、健康寿命の延伸を阻害する要因となり、良くない状況であると考えられています。他の人と話をしたり一緒に活動したりすることは認知症予防にも良いと言われています。認知症予防の観点からも、一人でずっと家にこもり誰とも話さないといった、頭を刺激しない状況は良くないです。家から一歩外へ出ることにより、色々な人と会話したり、色々な人の会話を耳にしたり、色々な物を目で見たりします。これらはすべて刺激として頭に入ることになります。そういったことが認知症予防にも非常に大事です。社会のために何かを行うということも、「まだ皆さんの役にたてる。」という意識を持つことになり、精神的・心理的にとても良いことだと思います。また家から外へ出てアクションを起こすということは、それだけで運動にもなります。なるべく家から外へ出る習慣をつける、または外へ出るきっかけとなる行事に参加するということが大事だと思います。大げさなことを行う必要はなく、昔の友人に会うことでもかまいません。また映画やお芝居を観に行くことも家から外へ出てアクションを起こしている事になります。また様々な講演会に参加するのも良いと思います。年齢を重ねても色々な事に興味を持ち、色々な人とつながりを持ち続けるということが非常に大事です。
 
医療コラム 新型コロナウィルス治療薬の開発は今
論説室 後藤 克幸

新型コロナウイルスに私達人類が打ち勝つためには、最終的に新型コロナウイルスに効く薬の開発が欠かせません。薬には、「ワクチン」と「治療薬」の2つの攻め方があります。人間の体に本来備わっている病原体と戦う力=免疫力を人工的に作るのが「ワクチン」。一方、体の中に侵入したウイルスを直接攻撃し、増殖を抑えて症状の回復を目指すのが「治療薬」です。

新型コロナウイルスのワクチン開発には今、世界中の研究者が全力で取り組んでいますが、短期間で完成させるのは難しいと言われています。1年近く、あるいはそれ以上かかるとも言われています。一方、治療薬の方ですが、これまでにインフルエンザの治療薬などとして、すでに開発されている薬が、新型コロナウイルスにも効き目があるかもしれないということで、様々な研究が進んでいます。すでに、他の病気の治療薬として認可され存在している薬ですから、新たに膨大な時間をかけて開発する必要がありません。これらについて、新型コロナウイルスの治療にも効果があるかどうかを科学的に調べる研究が進められているのです。

例えば、新型インフルエンザの治療薬として認可されている薬については、日本国内の製薬メーカーが開発した薬ということで、現在、国内の医療現場でたくさんの研究者が参加して、患者さんの同意と協力を得ながら、新型コロナウイルスの治療に効き目があるかどうかを確かめる研究が急ピッチで進んでいます。途中経過の報告では、軽症と中症の患者さんに服用してもらった場合は、9割の人の症状が改善したということです。今後は、この薬を使わなかった場合と比較して、本当にこの薬が効いたために症状が改善したのかを科学的な検証をしたり、新型コロナウイルスの患者さんに使った場合に副作用は出ないかどうかなどを確かめたり、薬の安全性についても、しっかりとした検証が行われる必要があります。

ただ、こうした薬は、他の病気の治療薬として、すでに開発済みの薬ですから、適用を拡大して新型コロナウイルスの治療薬として認められるまでに要する時間は、全くスタートラインから開発する薬の場合よりは、短期間で済む可能性は高いと思います。今後の医療の進歩、医学の開発の進歩に期待したいです。
 
 

 
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