健康ライブラリー

健康ライブラリー 2020年5月10日

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●教えてドクター 
★5月のテーマ「健康寿命」

名古屋大学医学部 老年科学講座 教授
葛谷雅文 先生

フレイルというのは歳と共にだんだん弱々しくなり、簡単に病気になったり日常生活に支障をきたしやすくなったりする虚弱な状態と考えていただければ良いと思います。自立した元気な高齢者と要介護になってしまった高齢者のちょうど中間の状態だと考えていただければ良いです。フレイルには診断法があり、5つの項目になっています。1つ目は「半年ほどの間に意図的ではなく体重が3キロ位減ってしまった。」という項目です。2つ目は「最近疲れやすいという自覚がある。」という項目です。3つ目は「最近あまり活動的ではない。」という項目です。つまり家から外へ出て、定期的に散歩したり体操したり運動したりすることが無くなってしまったという状態です。4つ目は「最近力が出ない。筋力が落ちてきた。」という項目です。例えばペットボトルのキャップが開け辛くなったとか、階段を上るときに手すりを持たないと上がり辛くなったと等、筋力が落ちてきたことを自覚している状態です。5つ目は「歩く速度がゆっくりになってしまった。」という項目です。例えば歩いている時、若い人に簡単に追い抜かされてしまったり、横断歩道を歩行者信号が青のうちに渡りきれない時がでてきてしまったり、といった歩く速度がゆっくりになった状態です。この5つの項目のうち3つ当てはまればフレイルで、1つ、2つ当てはまる場合はフレイルの前段階となります。1つも当てはまらなければ健常であると評価されます。フレイルとは別に、歳と共に筋力が衰えることを、サルコペニアとも言います。サルコペニアとフレイルは近い意味合いを持っています。
 
スマイルリポート 地域の医療スタッフ探訪
都築 晃 先生 (藤田医科大学 地域包括ケア 中核センター)

特に力を入れていること
仕事の中の一つとして「まちかど保健室」といって住民の方が無料で健康相談を受けたり、健康教室に参加できたりする部署を設けています。健康寿命延伸のために大切な要素として社会参加と生きがいづくりがあります。地域には多様な社会参加の取り組みがありますが、長寿社会になればなるほど、多くの疾患や障害を抱えた状態で社会に参加することには、不安を感じるといった方が少なからずお見えになります。「まちかど保健室」の特徴は看護師や社会福祉士などの医療や介護を専門とするスタッフが常駐している保健室だということです。ですから多様な障害や疾患について個別に相談できることに加え、専門スタッフが仲介することで、そこでの住民交流に不安無く参加でき、健康や文化交流の講座においても多くの方と一緒に楽しむことができます。「まちかど保健室」は豊明市にあります豊明団地URが管理する団地の中の商店街の一角の小さなお部屋にございます。そこに平日10時から15時まで職員が常時滞在して、様々な健康相談や取り組みを行なっています。

心に残るエピソード
独居の男性の方ですが、膝が悪くて外出や会話の機会が減少していらっしゃいました。そこで地域包括支援センターの職員さんからのご紹介で、外出する機会を作ることを目的に週に1回「まちかど保健室」にお見えになるようになりました。そこではその方に利用者の方をお出迎えしてもらったり、出席カードに印鑑を押しながら挨拶や会話をしてもらったりといった簡単なボランティアをお願いしました。すると会話をしているうちにどんどんお元気になられて、体力も気力も向上されて、外へ出かけることが増えました。また「まちかど保健室」では住民の方に得意な事で講座を開いたりしてもらっているのですが、その方は豊明市の歴史に詳しいということで、次回講師の立場で他の住民さんたちに講義を行うまでにお元気になられました。こうしてお元気になっていかれる姿に我々は大変嬉しく思いました。

今後の課題 
1つ目に「まちかど保健室」へ行くための移動の課題があります。自宅からわずかな距離に思えても、当事者の方には少し足が遠のくような距離であったりします。2つ目は社会的包摂と言われる課題です。障害があったり認知機能の低下があったりする方が安心して交流の場に参加するためには、それを周りの方が理解し、認め合い、支え合うという住民や地域の方々のお互い様の文化、こういったものの情勢がとても大切だと思います。社会参加寿命を延ばしていくためにはONE TEAMを意識することがとても大事だと思います。

 
 

 
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