健康ライブラリー

健康ライブラリー 2020年2月2日

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●教えてドクター 
★2月のテーマ「地域で支える認知症」

名古屋市医師会副会長 やまね病院 院長
山根則夫先生

よく間違えられますが、認知症は歳のせいではなく基本的には病気です。物忘れが出てきた時、本当は認知症なのに歳のせいだと言ってなかなか病院にかからない方がおられます。認知症というのは正常な認知機能がなんらかの脳の障害によって持続的に低下していき、日常生活・社会生活に支障をきたすような状態です。現在日本では認知症の方が500万人以上で、2025年には700万人となる推定です。特に65歳以上では、5人に一人が認知症になると推定されております。認知症は病気なので予防と早期の対応が非常に重要です。2015年1月に新しい認知症の政策推進総合戦略、「新オレンジプラン」が政府より提示されました。この戦略の特徴は国を挙げて認知症対策に取り組むということです。わが国最初の認知症国家戦略です。昨年6月18日に政府が認知症施策推進大綱を取りまとめました。これは認知症になっても住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられるようにとの取り組みです。
また認知症バリアフリーという取り組みを進めていくことで認知症になるのを遅らせる、つまり認知症の共生と予防に取り組んでいくということを決定しました。近い将来認知症になる可能性がある軽度認知症障害( MCI )という状態があります。これは正常と認知症の中間の状態で、1995年にピーターソンらによって示されました。その特徴としては、まず認知機能の低下があるという事です。それから記憶障害が歳の割には進行している、ただし認知症診断基準には該当せず日常生活にも支障は無いということです。
認知機能とはわかりやすく言いますと、「記憶」、「判断力」、「思考力」、「人と会話すること」、「注意力」でこれに支障がでるのが、認知症です。物忘れは記憶力が低下しておこるのですが、記憶は保たれているけども転びやすい等、注意力に障害がおこることによって始まる認知症もあるので注意が必要です。
 
 
●スマイルリポート ~地域の医療スタッフ探訪
出口賢太先生(瀬戸市 健康福祉部 高齢者福祉課)

★力を入れて取り組んでいる事
私の仕事はシニア世代の介護予防を推進することです。瀬戸市ではシニア世代の方に楽しんで介護予防に取り組んでもらうことに注力しています。瀬戸市の財産である市内の民間企業、 NPO 法人、生涯学習グループと連携してバラエティ豊かなプログラムを用意することで、シニア世代の方に自ら選んで楽しく介護予防に参加して頂いております。その一環として今年の1月から株式会社東海第一興商様と連携して新たな介護予防事業を開始しました。第一興商様が推奨されている「スポーツボイス」というプログラムなどを活用し、瀬戸市内のお寺を会場として行います。お寺で介護予防というのが私どもとしても新しい取り組みであり、新鮮な気持ちで介護予防に参加して頂けるのではないかと考えております。先日そのための体験会を開催したのですが120名の方にご参加いただけました。目新しさや介護予防を感じさせない内容、そして民間企業にご協力いただくことで、高齢者の皆様の興味大きくひくことができるのだと痛感しました。また第一興商様では地域の担い手育成にも力を入れていると聞きました。市としても教室に参加するだけでなく、講師やサポーターとして役割を担っていただける人材を増やすことを推進しており、何よりもご本人の生きがい作りは介護予防につながると思っています。そういった面でも今後期待をしております。

★心に残ったエピソード
私自身介護予防の現場に伺う中で95歳の参加者の方とお話する機会がありました。その方が参加されていたのは椅子に座ったままできるヨガ教室だったのですが、「その内容だったら自分でもできると思った。何よりここに通うようになって友達ができて、教室が終わった後に一緒にお茶をする時間が楽しみになった。」とお話しされていたことがとても心に残っております。また第一興商様から高齢者が生き生きと参加されている「スポーツボイス」の教室動画を見せていただきました。その動画の中では男性の高齢者が大変大きな声を出して活動されていらっしゃいました。担当の方が高齢者は確かに体が衰えてくれば知らず知らずのうちに自分自身で、「高齢者だから、こんなものだ」とブレーキをかけているのだとおっしゃっていました。そういった心を少しずつほどいていくことで高齢者の皆様がどんどん生き生きとして来るそうです。楽しいことが結果的に介護予防になるので、それを掘り起こして提供するのが私どもの仕事だと考えております。

★今後の課題
介護予防の現場に行っても、「あの教室に参加したいんだけど車が無くて行けない。」という生の声をよく聞きます。シニア世代の免許返納が話題となっている中で、移動手段の問題をどのように支援していくかというのが今後重要になってくると思います。ちなみに第一興商様では自動車学校でも介護予防教室を開催していると聞きました。教室に参加することでご自身の運転をするための体の状態を認識するきっかけにもなっているようです。公共交通機関が発達していない車社会のエリアでは、高齢者の免許返納による外出の機会減少、閉じこもりが問題となってくると思います。民間企業との連携も視野に入れてこういった問題に取り組んでいくことが重要だと考えます。
 
 

 
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