健康ライブラリー

健康ライブラリー 2020年1月26日

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●教えてドクター 
★1月のテーマ「婦人科と漢方」

名古屋大学病院 産婦人科准教授 梶山広明 先生

漢方の領域の中の「水」(すい)についてお話します。まず「水」というものは体の体液全体を指すものです。水分が滞ってしまうというのはよくあることです。体中のどこで滞るか?要するに体中のどこでむくみが起きるか?ということによって本当に多岐にわたる症がおこります。例えば耳の奥の方の内耳という所でむくむとめまいがおきます。また消化管の上の方である胃のあたりでむくむと吐き気がおきますし、腸の末端の方でむくむと下痢がおきます。めまいと吐き気は、西洋医学では別の科なのかな?と思うところですが、東洋医学では一つの疾患概念として同じものとなります。「水」の異常というのは割と天気や季節によって、起こりやすい時期と起こりにくい時期があります。例えば今晴れていたとしても、低気圧に向かって気圧が低くなっていくような時期は水の異常が起こりやすいです。あるいは季節柄と言うと梅雨の時期や残暑の時期も「水」の異常が多く、胃腸が弱くなったりめまいがしたりする患者さんが増えてきます。漢方の中で今まで申し上げたものの中に、「気」・「血」(けつ)・「水」(すい)というものがありますが、治療のポイントは非常にわかりやすく、足りないものは補う、滞っているものは巡らす、余分なものは捨てるということです。何を補って、何を捨てて、何を巡らすかというところで、病態が色々変わってきます。そのように考えると非常にわかりやすいです。西洋医学を用いている人も漢方薬をつかう場合があります。医師の指導のもとに使用することになりますが、車の両輪のように用いる場合もありますので、是非そういったことをご理解いただけたらと思います。
 
 
医療コラム ACP(アドバンス・ケア・プラニング)の大切な意味は?
論説室 後藤 克幸

今年、地域医療の現場で多くの人たちで議論を深めていただきたい、大切な課題の一つについてお話ししたいと思います。ACP(アドバンス・ケア・プラニング)という医療の取り組みについてです。アドバンスという英語は「前もって」、「事前に」という意味です。ケアは医療や介護の様々なケアや対応のことです。プラニングは心づもりや計画の話し合いを続けていくという意味。プラニングという「ing形」(現在進行形)の言葉になっています。単なるプラン=計画ではなくて、プラニングという行為の継続を表している点が重要です。
アドバンス・ケア・プラニングは、前もってどんな医療や介護を受けたいのか受けたくないのか、病状が刻一刻と変化する中で、心づもりを、患者さんとご家族、そして医療チームが、相互に信頼関係を深めながら、話し合いを続けていくコミュニケーションのプロセス全体を指す言葉なのです。1回の話し合いで作るプラン=計画ではなくて、長い時間軸の中で積み上げていく営みを意味しています。ですから「ing」形の「プラニング」という動きのある言葉で表現されているのです。

ただ、このアドバンス・ケア・プラニングという取り組みは、外国から入ってきた概念のため、日本語でどう訳すかがとても難しい課題となっています。そこで厚生労働省が去年アドバンス・ケア・プラニングを「人生会議」と呼ぶことを決めて、1枚のポスターを作りました。しかしこのポスターについて、医療現場で患者さんやご家族と一緒にこのアドバンス・ケア・プラニングの取り組みを進めている関係者から、「『アドバンス・ケア・プラニング』という言葉の本当の意味を理解していない内容」とか「患者や家族の気持ちを代弁していない」といった批判が相次いで、厚生労働省はこのポスターの配布を取りやめることにしました。確かに、アドバンス・ケア・プラニングは、長い時間をかけて行う営みのことですから、この本質を一枚のポスターや一枚の写真で伝えることはとても難しいと思います。

「人生会議」という言葉ですと、単純な1回の会議・・・と受け取られかねません。
患者さんとご家族、そして医療チームが、心を通わせながら真摯な話し合いを続けるプロセスこそが、アドバンス・ケア・プラニングの本質です。この営みを、医療現場で、大切なこととして広めていかなければなりません。シンプルなポスターやシンプルな写真よりも、長い時間をかけて多くの人たちと話し合っていく、キャンペーンのような運動が、必要なのかな、と思います。
 
 

 
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