●教えてドクター |
日本音楽健康協会 戸塚圭介 理事長
加齢を感じる部分は目から始まり口、足と続くと言われています。その中でお口の老化については、歯が抜けたり噛む力が弱くなったり、唾液の量が減っていったりということがあります。唾液の量の減少は重要な部分で、なかなか気づかないのですが、唾液の量が減ることは色々な悪影響を及ぼします。逆に言うと唾液の量を増やすことが必要となります。実は唾液の量は歌や音楽で増やすことができます。唾液の効果として抗菌作用や粘膜保護といった体を守る役割があります。唾液から NGF (神経成長因子)という物質が分泌されることを発見した研究がノーベル賞をとっています。この NGF が実は脳の損傷を修復する力を持っています。そこから、唾液から分泌されるNGFが認知症予防や認知症の軽減に繋がるのではないかということも考えられています。我々の研究で3曲ほどの歌を歌う前と歌った後を評価したものがあります。その研究でほとんどの方が歌唱後、唾液の量が増えているという結果が出ています。その中に入っている物質についてもまた色々研究をしています。NGFについても研究していますが、その他にはコルチゾールというストレスホルモンがどのくらい減少できるかという研究もしています。ドライマウス(口が渇く症状)の原因はストレスであるとよく言われています。この唾液中に含まれるストレスホルモンであるコルチゾールが少なくなると、ストレスが改善されているということになります。歌を歌うことによって被験者全員のコルチゾールが減ったという結果が出ています。歌の好きな方はいいのですが、逆に歌の嫌いな方はストレスホルモンが増えるのではないか?と心配されたのですが、歌の好き嫌いに関わらず歌うことでストレスホルモンであるコルチゾールが減少しました。歌や音楽はいつも人々のそばにあり、音楽を耳にしない日はあまりないと思います。その背景として歌うことが楽しく、さらに体に良いということを皆さんが知っているということもあると思います。日本音楽健康協会としては歌うことを習慣化していただき、歌や音楽が健康寿命の延伸の新しい生活習慣になっていけば幸いだと考えています。