健康ライブラリー

健康ライブラリー 2019年11月24日

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●教えてドクター 
★11月のテーマ「睡眠剤の正しい使い方」

名古屋大学大学院医学系研究科 精神医学分野教授
尾崎紀夫 先生

アメリカの専門家を対象にして「不眠症がなかなか良くならないのはなぜだろう?」という調査結果が2010年に発表されています。その結果わかったことは、睡眠薬だけで何とかしようというようなやり方ではダメで、まずは生活習慣の指導が大事であるという結果でした。薬と生活習慣の指導は両輪です。また不眠にうつ病が隠れていたり、本来ならば睡眠薬以外の治療法をしなければいけないような睡眠の問題、例えば睡眠時無呼吸症候群を見逃していたということがわかりました。治療上、眠れないことが昼間にどういう問題を起こしているのかが重要になります。例えば講義中に眠ってしまったり、会議中に眠ってしまったりする方々が受診にいらっしゃいます。そういう方々を検査してみると睡眠中に呼吸が止まっているという方が結構いらっしゃいます。睡眠中に呼吸が止まって困るのは夜間に酸素が不足するので、少ない酸素を補おうとして心臓が必死で打ちます。無理な負担が心臓や血管にかかりますから、そのうちに破綻して心臓病や脳卒中になる可能性もあります。それが生死に関わってくるというデータもあります。睡眠時無呼吸症候群は男性に多いです。一方女性に多いのが、夜眠る時に寝床で静かにしている際に、何だか体がムズムズして足をじっとしていられない、 手もじっとしていられない、お腹のあたりも何だか変だ、というような症状のレストレスレッグス症候群あるいはムズムズ脚症候群というものです。この場合は睡眠薬ではないお薬を使います。最後に繰り返しますが不眠の患者さんにありがちな間違えた生活習慣の問題です。長く寝ようとして寝床に長くいても、昼間の活動が減ってしまうと夜の睡眠は良くなりません。昼間の活動とペアと考えて下さい。昼間のうちに人と会ったり、目から光を入れたりするのはリズムを整え良い睡眠をとるためにとても大事です。また「今晩眠れないんじゃないか」と思いながら寝床に入ると、不安の時に起こる「危険な時には眠らない」という脳の働きが起こってしまうので眠れません。逆効果です。お昼寝も午後3時以降に長くしてしまうと夜眠れなくなります。薬を使ったり増やしたりする前に、まず生活習慣の検討が大切であるということが最後の私の言葉です。
 
 
医療コラム ~公的病院の役割を限定的にとらえすぎた再編論議に疑問の声
論説室 後藤 克幸

厚生労働省が先頃、地方自治体や公的機関が経営する病院の中で診療実績が少ない病院を実名で公表し「統合や再編などの議論を進めるべきだ」として1年以内に結論を出すよう求めました。超高齢社会で膨らみ続ける医療費に歯止めをかけたいというというのが、厚生労働省の意図なのでしょう。
統合・再編を進めるべきと名指しされた公的病院は全国で424件。公的病院全体のおよそ30%に上りました。この地方では、愛知では、国立病院機構東名古屋病院や津島市民病院など9病院の名前があがりました。岐阜では、多治見市民病院、羽島市民病院など9病院。三重では、市立伊勢総合病院、桑名南医療センターなど7病院でした。

公表の対象となった病院が、どのような基準で選ばれたのか・・・という点に今回、大きな問題があります。
基準は、①診療実績が少ないこと、②車で20分以内の近くに同じような医療ができる病院がある、という基準で分析をしたということです。

どんな問題があるかと言うと、①診療実績が少ないか多いかを評価するために調査した医療科目が、限定的なものだったのです。診療実績の調査対象になったのは、がん、心筋梗塞などの心臓血管病、脳卒中、救急医療、小児医療、周産期医療など9科目に限られていたのです。
この基準では、例えば結核などの呼吸器の医療や感染症の医療、消化器系の病気の医療、難病の医療などが、評価されませんでした。愛知県で、診療実績が少ないとして、統合・再編すべき対象になった、国立病院機構東名古屋病院は、実は、結核の治療や神経の難病の分野で専門家を配置して取り組んでいますが、今回の調査科目に入っていないために、この分野の実績が評価されずに「診療実績が少ない」という評価になってしまいました。

医療には、実は幅広い分野があり、患者にとっては、いずれも大切な分野です。医療の専門家の一人は、「これから日本は、外国人労働者や観光客の受け入れを増やそうとしている中で、外国から入ってくる感染症に対する医療対策は、今後ますます重要になる分野だ。そうした観点が欠落した調査に基づく今回の病院評価と実名公表は、あまりにもお粗末だ」と厳しく批判しています。
医療費に歯止めをかけるために、病院の数やベッド数を、超高齢社会にマッチした形に再編したいという厚生労働省の意図はわかりますが、あまりにも特定の分野だけのデータを見て機械的に 線引きをした今回の公的病院名公表は、地域における公的病院の役割を正当に評価しておらず、少し乱暴すぎるやり方ではないか?」という感想を持ちました。
 
 

 
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